果てのうたかた 勇者は物語を否定する

空月

第0話 割れる世界



 ――ぱき、ぱきぱき……かしゃん。かしゃん……


 何かが割れるような音が響いている。

 だけど、割れているのはモノではない――周囲の景色だ。

 亀裂なんて入るはずのないそれに、ひびが入って、割れて、剥がれて、崩れていく。


 かしゃん、かしゃんと、絶え間なく、割れた景色が落ちて割れる音がする。

 その異常な光景のただ中で、ラーイが……『勇者』が、私を見ていた。


「君がいない世界なんていらない」


 ぱきぱき。ぱき、ぱき……


「君が死んでしまう世界なんていらない」


 ……かしゃん、かしゃん……しゃん……


「――君が生きていないなら、なんの意味もないんだ」


 足下に転がり苦悶の声を上げる、かつて旅路を共にした仲間のことなんて、まるで頓着せずに。


 ただただ、ひたすらに私だけを見つめて――ラーイは、微笑んでいた。




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