第5話 人は好き

恋愛で人のことを自分から好きになったことはない。


好意を向けられてから初めて、気づき

意識が出来る。

それすら、恐怖からしか始まれない。

異性として見られているという恐怖。



当たり前に

誰も私なんて見ていないし、好きになるわけもない、

そう、刷り込まれているようで。

私がそう唱えているようで。

そんなふうに私自身がありたかった。

誰にも女だと思われたくない。


女と言う記号で見られること、

それはとても恐ろしい。


だから、プライベートでは、ひたすら


男の人は怖い、

男の人は嫌い。

そう思うように、強く強く願って言い聞かせていたように思う。


ひたすら、人畜無害で、誰の印象にも残らず

通り過ぎていく空気のような自分を目ざしていたからこそ、

人に気にかけてもらうことも

心配されることも、

ましてや好意を向けられることは

そんなにあることでは無いが、稀にあり


それが私には、言い方は悪いが

正直ありがた迷惑でしかなかった。

人間は、嫌いじゃない。どちらかと言うと複雑で思いもよらなくて、なんらかを得ることも多くて学びにもなって、好きな方なのだ。


だけれど個人として

自分が、人を好きになることが私は何より怖かった。

好かれることよりも好きになることの方が

どちらかと言えば怖いと言えるのかもしれない。


誰にも見つかりたくないと願いながら、

本当の私はきっと誰にも理解されず受け入れて貰えないという絶望の方が大きすぎた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る