第6話 艦内の食事事情
「おいおい、ダレスは確か34歳、まだ婚姻の歳を迎えていないんだろう。
今からそんなことを言っていちゃ、未来の伴侶に申し訳ないだろう。」
ダレスは、目をキラキラさせながら長身のスティーブを見上げる。
「本当にダッカム人に詳しいんだにゃ。
普通にょ人類種族にゃら34歳は年増だと思って居るにょに。」
「ダッカム人は長生きだからね。
人類種族に換算したらダレスは17歳の少女だろう。
後2年ほどは辛抱しなくっちゃ。」
「うん、後1年と9カ月、成人したにゃら故郷に帰って、伴侶を見ちゅけるパーティに出るにゃ。
それまでにできるだけクレジットを貯め込むんにゃ。」
「ああ、例のダッカム中がお祭りになる奴だね。
集団見合いのドレスは、やっぱり高いのかな?」
「うーん、ぴんきゃらきりまであるにゃ。
でも貯金の半額を出して晴れ着を作るにょが故郷の伝統にゃ。
そりぇで、いい雄を見つけるにょが雌の義務にゃんよ。」
「祭りは確か三日連続だったね。
どういう基準で伴侶を決めるのかな。」
「まずは、匂い。
良い匂いじゃにゃい雄は、最初きゃら度外視。
良い匂いの雄が見つかり、お互いに合意したにゃら、お試しセックスしてみるにゃ。
それで両方が納得したにゃら司祭の前で夫婦の宣言をするにゃ。
気に入らなかったにゃら、また探すのにゃ。」
「ははぁ、それで、最初に身体を摺り寄せながらお互いの周りをぐるぐる回るのか。
あれは匂いを嗅いでいるんだね。」
「へぇ、ひょっとしてスティーブはダッカムに行ったことがあるんにゃ?」
「いや、一度もないよ。
宙軍のデータベースに第一次調査隊のホログラム録画があってそれで知ったんだ。」
「しょうか、今じゃ祭りにょときは部外者を完全に排除しているはずだから、どうしてスティーブが知っているにょか不思議に思ったけど、百年以上も前にょ時代はホロビデオも撮れたんだにゃ。」
「そのようだね。
随分と変わったお祭りだとは思った。」
「スティーブは、どうやって雌を選ぶのにゃ。」
「うーん、ダッカムみたいなお祭りは無いけれど、一般的には知人同士が集まる小規模のパーティで選ぶことも有るみたいだね。
でも、仮にそうしたパーティで知り会っても、いきなりのお試しは、普通はしない。
しばらく交際してみて互いに気に入ったらするかもしれないけれどね。
女性はセックスで妊娠する可能性もあるから、
それから気に入った女性がいたなら声をかけて親しくなると言うのもあるけれど、見知らぬ男が声を掛けても、普通の女性は警戒してしまうから、中々難しいようだ。」
「何だか、人類種族にょ方がややこしいにゃ。
私達は、お試しにょ時はノリスを飲んで避妊をするんにゃ。
人類もそうすればいいにょに。」
「うーん、ダッカム人みたいに簡単にはできないようになっている。
避妊はできるけれど、それが問題ではない。
多分、ダッカム人の女性とは生理的に違うのだろうけれど、セックスをしたことのない女性を処女と言って、初めてのセックスは女性にかなりの痛みが伴うんだ。」
「あ、それはヒトにょ雌から聞いたことがあるにゃ。
私らにはそんなもにょがあるとは聞いてにゃいけれど、ヒトにょ女は男を初めて受け入れた時は、裂けたり、切れたりして出血するって・・・。
ヒトにょ雄ってそんなに道具が大きいのにゃ?」
「さぁて、どうかな?
人によって大きさは多少違うだろうけれど、女性の方が少し狭くできているらしいよ。
だからセックスに慣れるまでは痛みが伴うと聞いている。」
「で、スティーブは誰か決まった相手がいるのかにゃ?」
「いや、今のところはいないよ。
目下募集中。」
「ジャマンじゃ無理だにゃ。
基地には海兵隊と陸軍に。少しは人にょメスもいるけれど、少ないにゃ。
下界のケレンディスにょ一般人には結構沢山いるけど、船内居住していたら出会いもないのにゃ。」
「うん、まぁ、特に焦る必要はないよ。
人類の半分は女性で占めている。
その内僕に見合った女性がきっと現れるさ。」
「うーん、スティーブはまだ若いけれど、艦長は25歳で結婚したと聞いているにゃ。
ヒトは、そにょぐらいで結婚適齢期なにょかにゃ?」
「男性はかなり幅が広いね。
12、3歳前後から70歳前後まで女性を妊娠させることができる。
一方の女性の方は、生理が始まると妊娠可能な身体になるけれど、50歳前後で生理が終わると妊娠できなくなる。
その意味では12、3歳から50歳ぐらいまでが適齢期。
但し、老齢化が進むと男も女も異性に対する魅力が薄れる。
その意味では、女性は17歳ぐらいから25歳ぐらいが一番綺麗な時期に当たるし、そうした若い女性に魅力を感じさせる男性は概ね20歳前後から40歳前後までだろう。
ダレスだって150歳以上の雄には魅力を感じたりはしないだろう?」
「そんな人はちゃんと伴侶がいるにゃ。
だから私がそんな雄を選ぶわけがにゃい。
ダッカムでは、不倫は有り得ないからにゃ。
仮に伴侶が死んでも再婚は有り得にゃい。
司祭にょ前で死んでも連れ添うと誓うからにゃ。
伴侶が死んだら、自分が死ぬまで独り身だよ。」
「ヒトは死に別れたら、生き残った者は再婚してもいいことになっている。
必ずしも再婚するとは限らないけれどね。
それとヒトの場合、往々にして不倫はあるようだ。
妻子ある男性と未婚女性が肉体関係を持ったり、その逆もある。
僕は共感できないけれど、セックスを遊びと考えている人もいるようだね。」
「うーん、そにょ点、ヒトはルーズだにゃぁ。
見境なくセックスをするにょは、条理に反していると思うにゃ。」
「僕も同感だよ。
ところで、そろそろ夕食の時間だけれど、ダレスはどうするの?」
「船内にある保存食をいつもたべているにゃ。
スティーブも食べるかにゃ?」
「ふーん、保存食ねぇ・・・。
まぁ、何もなければそうするけれど。
材料を買ってきて、自分で作る方がよさそうだな。
この偵察艦が行動中はどうしているの?」
「朝はジブリ・ティーにプレオ・マフィンが定番。
昼と夜は、保存食だにゃ。
保存食は1か月分ほどいつも積んでいるから、みんな自分にょ好きなもにょを温めて食べているにゃ。」
「司厨員が乗っていないのは知っているけれど、誰も料理はしないのかい?」
「航海当直に入っていないにょは、私と艦長だけだにゃ。
艦長や私にょ味付けじゃ、誰も食べないからにゃ。
それに個々に好き嫌いや禁忌で食べられないもにょもあるにゃ。
保存食にょ方がまだましというわけにゃ。」
「それはまた・・・。
じゃぁ、食材は何も積んでいないのかい?
一応、長期食品保存庫もあるはずだけれど・・・」
「うーん、調味料は別として、果物と保存食だけだにゃ。
野菜なんかは保存庫に入れておいても2週間はもたないからにゃ。」
「この衛星の売店には食材はないの?」
「こっちにょ軍施設にょ売店に有るにょは、保存食か弁当だけだにゃ。
民間係留施設にょ近くには大きな食品店があって、かなりにょ品数はあるみたいだにゃ。
尤も、私は行ったことが無いきゃら詳しくは知らないにゃ。」
スティーブは結局、民間係留施設の食品店に出向いて食料を買い出しに出たのである。
これ以後、スティーブが一人で当直する時は別としてそれが習慣となった。
そうして他の当直員がその恩恵に預かることになった。
何しろスティーブの作る料理は異人類であっても美味いと感ずるものだったからである。
無論、スティーブの食べる料理と同じものではあるものの、香辛料やソースを替えるだけで美味い料理になってしまうのである。
それを食べてしまっては、保存食料など食えたものではない。
こうして保存食料の購入割合は次第に減少することになった。
購入しないわけではないが、あくまで航宙中の食事や非常食として保管されるにとどまった。
その分、代わりに生鮮食料品の購入が増えたのである。
航宙中にスティーブが料理をしないわけではないが、11名分の食事を作るとなれば相応の時間が必要となる。
しかしながら、航宙中にはその時間を取るのが難しいのである。
少尉は准尉よりも階級が上のため、ジャマンでは一等航宙士となったスティーブは8時から0時までの時間帯に航宙当直となる。
本来的に艦長の次の席次に当たる者が食事を作ることなど有り得ないのだが、そのような慣習など無視して、夕食については二日に一度、便宜的にスティーブが全員の分を作ってくれることから、乗組員はその夕食を心待ちにするようになった。
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