Ep.Last -魔王と勇者は今日も仲良く平和ボケ中-
「ねえ、エリス」
「ん?どうしたのルーシー」
「今日って特に予定は無いのよね?」
「うん、そうだね」
「じゃあ」
ソファに座るエリスの足を枕にして横になる。
「本当、信じられないわね」
「何が?」
「私とエリスがこうして一緒にいられることが、いまだに信じられなくて」
まさか、人族と和解するなんて、人族も魔族も予想だにしていなかった結果だろう。
「まあそうだね。僕も…そうかも。本当に通用するとは思わなかったし。一か八か…って提案したことだし、フェルシーやイスタがあんな行動するとは思ってなかったし」
「あれって、フェルシーやスレーベが勝手に私を説得しに来ただけだったのね」
「そうだね、あれは僕も驚いちゃった」
「…そういえば、フェルシー達を殺さずにどうやって無力化したの?」
「あぁ…えっとね…剣の腹で頭をこう…ね」
「あぁ…気絶させたのね」
「そうそう。一応目覚めるまで隣に居たけど」
「そんなことしたら目覚めた時に殺されちゃわない?」
「まあ、そうかもね。…目が覚めた時に皆目を丸くしてたよ」
殺そうとした相手に気絶させられて、放置ではなく傍で見守ってくれてたら誰だってそんな反応するわよ。
「ルーシー、ちょっと寝る?」
「え?…えぇ…良く分かったわね、眠いって」
「あはは、まあね。1年近く一緒に過ごしてるから、ルーシーの表情を見たら眠いかどうかくらいはすぐわかるよ」
…そういう事が言えるのも、エリスがちゃんと私の事を見てくれているからなのかしら。
「…じゃあ、おやすみエリス」
「うん、おやすみ」
■
「―――ん…」
薄く目を開ける。
…あれ…なんでエリスが…?あ…そっか…膝枕…。
「…あ、おはようルーシー」
「…えぇ…おはよう、エリス。膝枕ありがとうね」
エリスの膝枕から起き上がって、エリスの隣に座り直す。
「ねえルーシー」
「どうしたのエリス?」
「魔王城、久しぶりに行ってみようよ」
「良いけれど…どうしたの?」
「いや…ルーシーと和解した後から、そういえば行ってないなって思っただけだよ」
「―――そういう訳だから、ちょっと行ってくるわね、フェルシー」
「かしこまりました。お気を付けて」
「うん、ありがとう。じゃあ、行こうか、ルーシー」
「えぇ」
家から少し離れたところで、エリスが転移魔法を展開する。
景色が一瞬で切り替わり、場所は魔王城の門の前。
「…相変わらず、禍々しいね…」
「そうかしら?」
私はかなり安心できるけれど…。
「…じゃあ、取り敢えず玉座を見に行きましょうか」
「あ、うん。分かった」
転移魔法を展開して、玉座のある部屋の前までテレポートする。
そびえるような大きな扉を開けて、中に入る。
入り口から見て右側から差し込む紫色の光が、玉座を照らしていた。
「変わらないわね…ここ」
そう言いながら、玉座の前の階段を上って玉座に座る。
「お…ふふ…」
少し懐かしい。ソファよりも柔らくて、背もたれに体を預ければ熟睡できてしまいそうな程座り心地が良い。
「エリス、一旦部屋を出てもう一回入ってきてくれる?」
「あ、うん。分かった」
頷いた後に、エリスが扉の外へと出て扉を閉める。
少しして、扉が開いてエリスが戻ってくる。
「よくぞ来た、勇者よ」
頬杖をついて、出来るだけ偉そうにその言葉を発する。
「…おぉ…すご…見下されてる感が…」
「ちょっと私も体験してみたいわ。どんな感じなのか」
「じゃあ、交代する?僕はルーシーみたいな事はできないと思うけど」
「するする。ここ座ってエリス」
エリスと役を交代して、今度は私が勇者役。大きな扉を開けて、玉座の間へといざ…。
「………」
エリスは何も言わずに見下すような視線をこちらに向け続ける。
「確かに…これはすごいわね…」
「でしょ?」
これがエリスが体験してた景色なのね…。
「…本当に僕ら以外誰も居ないね」
「そうね。ここにいた魔族たちは皆どこかに行っちゃったから」
魔王城を探検しながら、エリスとそんなことを話す。
「あっ、あれ何?」
エリスがそう言いながら、一室の奥の方にある物を指差す。
「あぁ、あれは暖炉よ」
「暖炉?なんで?」
「魔族にも暑がりや寒がりが居るのよね。だからそれの対策…って感じかしら。この魔王城はずっと前の初代魔王の頃から作られて守られてきたものだから、正直何のためにあるのか分からない部屋も多いわ」
「そうなんだ」
玉座の隣にある部屋も、エリスが魔王城に来る三日前くらいに元々武器庫だったと判明したくらいだし。
「そういえば、ルーシーの家族ってどこにいるの?」
「私が魔王になるちょっと前に亡くなっちゃったのよね」
「…あぁ、そうなんだ。なんかごめん…」
「いえ、別に構わないわよ?」
…というか、エリスの家族の方がもっと酷いのだから謝らなくてもいいのだけど…。
■
「いやー、楽しかったね」
「そうね」
1年なんて些細な時間でも、懐かしいと感じるのはきっと、エリスやスレーベ達と過ごす時間がとても濃くて楽しいから、なのでしょう。
「また来ようね、ルーシー」
「えぇ、そうね。エリス」
そうして今日も、スレーベ達の待つ家へと帰るのだった。
――――――――
作者's つぶやき:まあ、取り敢えず一段落と言う事で。とはいっても、これ以上書ける気がしないのもまた事実。シーズン2はきっとございません。
次は…そうですね、GSMワールドのリベンジでもしましょうか。流石にあれで終わらせるのはなんか嫌なので。
リメイク…っていう訳じゃないですけど。もう少し設定やストーリーを練って書き直します。
GSMワールドのリメイクはこちらです↓
https://kakuyomu.jp/works/16818093082248115838
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魔王と勇者は今日も仲良く平和ボケ中 ますぱにーず/ユース @uminori00
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