第165話試験対策
「たしかに」
まだ、一つもできていない状態である。
確かにロスを少ない状態にした方が良いに決まっているが、癒しの炎の加工もしたことがなければ、起爆用の魔法もフェアから教えてもらって少しできるレベル、挑戦するには時期早々ということだろう。
「じゃ、実践してみるわよ。
まずは、よく使う魔法からやってみて、感覚を掴みましょう。
まずは、手のひらに小さく魔法を出してくれるかしら?」
「はい」
ウィリィンは言われた通りに手のひらに火を小さく生み出す。
すると、アウィリィはウィリィンの手に自身の手を近づけて、出ている火を押し込み始める。
「え!?あ、ちょっと!?」
「ほら、ウィリィン止めちゃだめよ、火を出し続ける感覚はキープして」
「は、はい」
ウィリィンは言われた通りに出力を続ける。
すると、どんどん日火はウィリィンの身体の中へと押し込まれていく。
すると、ウィリィンの体内に熱い何かが逆流してくる。
「ナニコレ・・・熱い」
自身の一部ではあるものの、周囲の魔力と馴染むことなく存在している感覚、これが魔力を魔法によって性質を固定化した状態なのだろう。
ウィリィンも身体に炎を纏ったりすることはあったが、それを完全に体内で実行しているような感覚だ。
が、その感覚を感じすぎたせいか、
「あつっ、あつつ」
身体の至る所から火が出てきて魔法は排出されてしまった。
「感覚はなんとなく掴めたか?
取り敢えずは体内に留めることは無理してやろうとせずに体内に生成できるようにするといい」
ルリウィン達に促されるようにウィリィンは魔法を使用していく。
「魔法を発動するけど、体内に留めておく感じ・・・」
ほぼ全て体外へと漏れ出ているが、それでも一部を体内で魔法が蓄積され、身体の至る所から吹き出ているのが感じ取れる。
「ふむ、体内になるべく伸ばす方法については分かるか?」
「いや、それが、穴の開いたバケツみたいに・・・」
体内に魔法が入ってはすぐ出て行ってしまう。
「ふむ、ではウィリィン、少し踏ん張れ」
ルリウィンがそう言うと、ウィリィンの身体全身をグッと押し付けられるような圧迫感が襲う。
「うぐぅ!?」
すると先ほどまで漏れ出ていた火が漏れ出る先を無くし、どんどん蓄積されていく。
「どうだ?ウィリィン感覚は掴めそうか?
慣れてきたら右手だけ解除するので自分で漏れ出ないようにしてみろ」
「は、はい」
ウィリィンの魔力をルリウィンの魔力が全方位から押さえつけ、漏れ出る隙間を無くしている。
魔力の密度を上げて隙間を無くす、その感覚を掴んでいく。
そんな感じで練習を繰り返し、ある程度体内に留めるコツレベルは掴むことに成功した。
「はい、今日はこんなものかしら。
取り敢えずは自身で練習できるぐらいには上達したと思うわ」
「ありがとうございました」
「練度に関しては反復あるのみだな。
常日頃から癒しの炎をストックした状態で生活できるようにしてみるといい」
「は、はい」
「だけど、やっぱりこの方法はどれだけうまく抑えても少しずつ効果が空気中に漏れ出て、減っていってしまうから、その減少していく感覚についてもしっかり感じておくと、実際に使用した際に思った以上に効力が低いってことは避けられると思うわ」
どんなに熱を遮断できる瓶に暖かい飲み物を入れていてもいつかは同じ温度になってしまうように、少しずつエネルギーが分散し、込められた魔法は出て行ってしまうそうだ。
「それに、これをどんな状況下でも維持できるようになるのが最低目標だ。
戦闘中、攻撃を受けた際に抜けてしまっては意味が無いのでな、普段の鍛錬中もその状態をキープして行うようにしていくぞ」
「が、がんばります」
ということでルリウィンの執務室での用事はこれで終了。
ウィリィンは魔法を体内に留める練習をしながら自身の部屋へと戻るのであった。
なお、周囲からはチロチロと火を身体の至る所から出しているのをおり、微笑ましい表情を浮べていた。
なお、火は一瞬で消えるのと、館内の建材や、家具の類は全て自己再生機能がついてるため、その程度の火では影響はない。
ちなみに、これはこの館だからというわけではなく、建材には基本的にこの機能が付与されている。
単純な話、争いが絶えず、日常的に壊されることが多い家屋は壊すたびに直していてはキリがないため、そのような処置をするようになっている。
「歩きながらでも少し難しいな・・・。
ここだと、色々目線を感じるし・・・」
普段なら声をかけてくる執事やメイドたちがウィリィンに対して遠巻きにこちらを見ていることは気付いている。
というかわざと気付かれるような位置にいるため、なんだかそわそわしてしまう。
ウィリィンは一端練習するのは諦め、自室へと足早に戻るのであった。
「ふう、これで、じっくりと、練習できる。
お、カリキュラムも届いてる、これ見ながら練習するか」
先ほど見ていたカリキュラムが置いてあったので、それを見て自身にとって有益な科目について考えつつ、魔法の練習に励むのであった。
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