第166話魔道具作り
そして次の日。
「ウィリィンおはよー。
今日は魔道具作りが得意な兄妹に会いに行くよー」
朝起きると、フェアが部屋に入ってきて開口一番今日のやることについて説明してくる。
「おはようフェア姉、ってフェア姉鈴ちゃんと処分したの?」
「あーあれねー。
書いておいたでしょー?
ちゃんと処分したよー。
それに下手に壊して今日も悪夢見てたら大変だったでしょー?」
「それは、そうだけど・・・」
確かに、万全は尽くすつもりではあったが、確実に音色を聞かずに壊せる自身はなかった。
二日連続悪夢を見ていたら眠りに落ちること自体がトラウマになりかねない。
というか、昨日も悪夢を見ないか、少し不安ではあった。
「ちなみに、処分って壊したと同じ意味であってる?」
「んー?
ソウだヨ」
フェアはウィリィンからあからさまに目をそらし、片言になりながら答える。
「フェア姉・・・。
じゃあ、返して?」
ウィリィンはフェアをジト目で見ながら返却を要求する。
「いやー、大丈夫、大丈夫何も問題ないからー。
それよりウィリィン魔道具作りだよ、魔道具作り。
試験の対策をしなきゃ」
「話題を逸らした・・・。
まあいいや、返すつもりも無さそうだし、それよりは試験対策の方が直近でヤバいから」
ウィリィンはフェアとの押し問答を諦めることにした。
「うんうん、それがいいよー。
試験でいい点とらないとねー」
ということでフェアに連れられ、食事など身支度を済ませ、ウィリィンはある部屋の前へと連れて来られた。
部屋の扉は魔法陣がぎっしりと描かれており、材質も他の素材とは異なるようで、カラフルな色合いをしている。
「ボラト兄入るよー」
「おう、入っていいぞー」
フェアが声をかけると扉から声が聞こえ、自動的に扉が開く。
ウィリィンはフェアに連れられて部屋の中に入っていく。
部屋の中は壁に戸棚が天井まで敷き詰められており、何やら分からない生物の一部だったり、試験管だったりが所狭しと置かれており、
床にも魔法陣や、計算式が書かれた書類が山になっていたり、一部崩れて辺り一面に散乱していたりする。
部屋内は薬品のツンとした匂いがし、まさに実験室である。
「あ、足の踏み場が無い・・・」
「ボラト兄、片付けないとダメだよー?
私たちが誤って踏んづけても責任取れないからねー?」
「わりいわりい、片付けようとは思ってるんだがな。
それを考えている間に新しいアイデアが降ってくるんだ。
だから、しょうがないだろ?」
部屋の奥から分厚い手袋と眼を保護するためのゴーグルを着用した少年が現れる。
機能性を追求したような服装をしており、研究者気質であることが伺える。
そして先ほどの発言より、片付けることより思いついたアイデアを試す方に熱中してしまうようだ。
「ま、分からなくはないけどー。
それで、試作品とかがダメになっちゃったら本末転倒だよー?」
「それもそうだな。
よし、お前らが帰った後に一度片づけをしてみるとしよう。
それで、初めましてだな。
ボラトだ、よろしくな」
「よろしくお願いします。
ボラト兄様」
挨拶されたウィリィンは当たり障りのない感じで丁寧に返答する。
「おう、そこまでかしこまらなくていいぞ。
ウィリィンは魔法を閉じ込める魔道具を作製しに来たんだったな」
「そうそうー。
試験対策で必要だからー、最終的には材料まで自分で調達できるもので作れるといいかなー」
「そうか、練習分は自分で確保しなくても大丈夫か・・・」
ウィリィンは最初から一発で魔道具の作製を成功させられるわけがなく、ある意味ウィリィン的には命を預けるようなものである為、なるべく高性能なものを作製したい。
それの素材集めに時間を割く時間も考えると、あんまり作成に試行錯誤ができないことを危惧していたが。
「ああ、今回作るのは、癒しの炎を閉じ込めておいて魂再をする時間の間、起動できる魔道具だろ?
魔法の許容量はそこそこだし、起動条件も所有者がやられた時でそこまで難しい条件じゃない。
それぐらいなら練習の素材は俺のストックから自由に使っていいぜ。
あとは、作り方と、素材だな。
そういや、フェア、お前はこのレベルは簡単すぎるだろ?
何か別の物を作るか?」
ボラトはがさがさと何かを探し始めるとラベルの張られた容器を3つ取り出す。
「うーん、どうしよっかなー。
あ、音に指向性を凄く持たせることができる魔道具ってできるー?」
「フェア姉?」
「おう、それならここら辺の素材で作れると思うぜ」
というと、また、再度ガサゴソし始め、素材を5つほど取り出す。
ウィリィンはフェアが作ろうとしているものが鈴の音色を狙った人にだけに聞かせる用のものを作製しようとしていることに気づき、フェアにジト目を向ける。
「んで、先にウィリィンの方から説明していくか。
まずは作りたい魔道具の機能について明確にしておく必要がある。
これは、事前におかあより聞いている。
まず、魂再時に癒しの炎を展開できるようにしたい、これが機能だな。
それを実現するために癒しの炎を閉じ込めておく機構と所有者の死を検知して癒しの炎を発動させる機構を作製する。
んで、それを実現するための素材がこの3つだ」
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