第164話カリキュラム

「?

そ、そうなのですね...」


ウィリィンがその意味をあまり理解できていなかったが、実際人のことを心配している余裕は割とないので、一旦スルーすることにした。


「それで、本題に戻ろう」


そう言うとルリィウィンはウィリィンに紙束を手渡す。

そこには入園予定の子の名前や住んでいる場所、保護者の名前など情報を書き込む必要があるようだ。

なお、既にルリィウィンかアウィリィの手によって記入済みである。

また、他の紙を見ると授業のカリキュラムが書いてあり、選択式のものもあるようで、色々あるが、発展的な科目以外のほぼ全てにチェックが入れられている。


「えーと、こんなに授業受けれるのでしょうか?」


「受けるというより合格基準を満たしていれば大丈夫よ。

それに発展授業に関してはそれに合格すればそれより下位の授業は合格したことになるわ。

だから思っている以上に受ける授業は少ないはずよ」


確かにカリキュラムを見ると上位の授業には下位の授業相当のことが前提条件として記載されている。


「まあ、授業に関して、今チェックが入っているものに関しては減らさぬ。

ウィリィンに確認してほしいのはチェックを入れてないもので興味ある授業があるかだな」


とはいうものの、チェックが入ってるものの中には変なものも多く存在し、


「えーと、この誘惑学とか、監禁学、捕縛学とかも学ばないといけないのでしょうか?」


「必要だろう?」


「誘惑学は心理学の応用で相手を如何にしてこちらの都合のいいように誘導するかといった実践的な科目よ。

監禁学、捕縛学は相手を捕らえる必要がある時に重宝するわ。

しつこい相手に絡まれた時の対抗手段は必要でしょう?

まあ、護身術の一環だと思えばいいわ」


一端誘惑学は置いておくとして、監禁、捕縛は先ほどそういうことをする人から身を守る方法を学ぼうというお話が出ていたので、なぜそれを率先して学ぶのだという話になるが、それらに対抗する手段もそれらになるという話ではあるのだろう、殺せないし。


「なるほど、分かりました・・・。

それで、えーと」


ウィリィンはチェックの付いてない科目を見てみるが、どれも難しそうな内容が記載されていたり、マニアックだったりでパッと見どこで使うのか分からないものも多い。

世界創造学、ダークマター学、レインボーカウ学、微粒子魔学、じゃんけん学、憾学、座薬学、時間定義学、小指学・・・。

こんな調子で永遠にある。


「ふむ、そこまでそそられる科目はないようだな」


「ええと、ちょっと今見てもあんまり分からないかも・・・」


「これは、というのがあれば、追加で入れておこうぐらいな気持ちだったから、別に無理に見つける必要はないわ」


「そうだな、それに入学後年2回、項目の変更を受け付けておるからな、安心しろ。

あと5日で提出するのでな、それまでに追加したいのがあれば記入しておけ。

パンフレットや、記入用紙の類はウィリィンの部屋に送っておくので後で確認しておくように」


「は、はい」


「あとは、魔法を事前に発動させておく方法について軽く理論と実践をして、自分で練習できるようになったら今日の用事は終了ね」


早速試験に向けての対策が行われる。


「イメージとして近いのはフェアが良く使用しているトラップだな。

あれは触れる、特定の動作をするなどの起動条件を定めて、閉じ込めた魔法が稼働するようになっておる」


確かにフェアの魔法はトラップという敵を攻撃、翻弄するための使用方法ではあるが、本質は魔法の先行発動ではある、というか、今の話を聞く限りでは違いが分からない。


「フェアちゃんのトラップとの違いは既に完成された魔法を設置している点。

あれは、中に燃料が入っていて、外側の検知する魔法によって起爆剤が燃料と混ざり合い、爆発などを起こしているわ」


例えるのであれば手榴弾だろうか、あれはピンが抜かれることで中の物質が爆発し、周囲に影響を与える。


「に対し、今行おうとしているのは癒しの炎自体を自身の魔力の一部として扱う方法だ。

これのメリットは自身から切り離さないので、破壊されずらく、吹き飛ばされたりしたとしてもその効果のほどが得られること、条件を満たした後のタイムラグがなく、不発にもならないことだ」


この方法は自身保持している魔力の一部を魔法に変えて、使用する方法のため、燃料ではなく、魔法そのものを自身で保持しているような状態になる。

利点は確実性にある。

だが、先ほどの手榴弾でいうところの爆発を起こすだけの熱量を体で保持し続けるようなものであり、


「欠点としては最初の方に話したと思うけど燃費が悪いわね。

トラップは保存に適した形に加工するのに対してこれはそのままだから」


「癒しの炎を加工しておくことは・・・できないのでしょうか?」


そう、自身の魔力の一部として保持しておくなら加工して保存の効く形にしておく方がロスが少ないだろう。


「まあ、その場合は起動用の魔法も保持しておく必要があるがな?

事故率が上がるのでお勧めしない。

あと30日のことを考慮すると、まずは一つの魔法で完結させておいた方が良い」

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