第160話ダンジョン報告

フェアが執務室の扉をノックすると、


「入っていいぞー」


と中からルリィウィンの声が聞こえてくる。

そして中に入るとルリィウィンとアウィリィが一緒にいた。


「お疲れ、2人とも。

ダンジョン探索はどうだった?」


「暗いし、全方位気にしないといけないし、その状態で長時間過ごさないといけないしで凄い周囲に対して意識を張り続ける力がついた気がします」


「ほう、今日挑んだのは洞窟型のダンジョンだったか、確かに中に明かりの類は存在せぬし、明かりを点けずに進んだほうが戦いやすいだろう」


「そうね、明かりを点けるとかなり遠くからでも魔物に気づかれるでしょうから。

それで、どういった魔物と戦ったのかしら?」


「ゴブリン、スライム、オーク、ウインドバット、シャドウキャットの5体だねー。

休憩地点も挟んだからー、シャドウキャット以外はより強いのとも戦ったねー。

あとはオークは変異種とも戦ったし、途中からキメラ化もして強かったよー。

最後のオークはお母さんから言われてた縛りをやめて戦わないといけないぐらいには強かったよー」


フェアが戦った魔物の解説を行う。


「ほう、それほどか。

そうだな、苦戦したものを何個かピックアップして戦いの様子を教えてくれ」


2人は交互に補足しながら特に苦戦した戦いを説明する。


「それでドロップしたのがこれらか。

心臓以外は普通のものであるが、逆に言うと心臓は面白いことになっておるな」


「そうね、キメラに成り立てというのもあってそれぞれの部位が混ざりきらずに生えてるわね」


キメラの心臓がドロップしても、こう奇妙な形にはならないらしい。

キメラとしての身体が馴染みきっていないが故にこのような形になっているそうだ。


「まあ、レアケースではあるが、ないことはない。

それに掛け合わされる前の素材のレベルは決して高くないのでな、そこまで突飛なことは起こせぬだろう。

ただ、何かの触媒に使えば、少し変わった効果が得られるやもしれぬな」


「勉強したら使ってみるといいわ」


魔道具等の類を勉強すればより価値などが分かってくるとのこと。

割と戦闘重視で勉強をしているので、そういった戦いの補助となるものに対してはあまり挑戦できていないのが現状だ。


「頑張ります」


「それで、これがそのキメラオークを倒した先にあった宝箱から出てきた鈴か」


ルリィウィンは木箱から取り出し、綿を取り外し、持ち上げて色々な角度から観察する。


「そー、この見た目だと恐らく、鳴らすと良くない効果がつきそうだなーって思って、すぐには鳴らさなかったんだよねー」


「ふむ、効果のほどは分かったぞ。

ほれ、鳴らしてみるといい」


「えっ、フェア姉」


ルリィウィンがウィリィンに手渡し、鳴らすように促すが、物騒そうなものになるべく近づきたくないため、フェアに助けを求めるが、


「大丈夫、大丈夫ー。

お母さんが鑑定してくれたんだから。

それに多分鳴らした人というよりは音色を聴いた人に影響あるタイプだよねー?」


「そうだな、なので誰が鳴らそうと変わらんぞ?」


それなら尚更他の人に鳴らして欲しかったが意を決して鈴を鳴らす。


心の芯の部分を揺さぶり、不安にさせるような音色が広がるが、別段何ともない。


「あれー何もないよー?」


「もう一回振る?」


「いや、効果のほどは出ておる。

明日になれば分かるだろう」


「ふーん?

んじゃ、効果が出るのが楽しみだねー。

んじゃおやすみー」


いや、どう考えても良い効果なわけないだろうとウィリィンは内心思いながら、どんな効果なのか、恐怖する。

そしてフェアが去ってしまったのでこの鈴を箱に戻し、


「では、おやすみなさい」


鈴をその場に置き去ろうとしたが、


「おう、おやすみウィリィン、あと忘れ物だぞ?

戦利品なのだから自室に飾らなくてはな?」


ルリィウィンがニヤッと笑いながら鈴を渡してくる。


「あ、はい」


この感じ、受け取りを拒否しても無駄な感じがするので諦めて持って帰る。

それに、鳴らさなければ無害なのだ。

まあまだどんな効果があるかは分からないが、取り敢えずはふとした拍子で空いたりしないように厳重に閉まっておこうと心に決めるのだった。


そして、自室に戻って来たが鈴の効果が全く分からない。

腕輪で検索をかけてみたり、先程と今の体調を比較してみたりしたが一向に変わらない。


「んー、ダンジョンの宝箱の品は一品物が多すぎて調べても出てこない・・・。

寝つきが良くなるとか、欲しいのもあるけど魔物を呼び寄せたり、衰弱させるようなものまで多種多様・・・。

うん、分からない、だけど魔物の強さに合わせて効果も強くなるのは共通しているから、そこまで恐ろしい効果にはならないと信じるしかない」


ウィリィンは考えても無駄なので諦めて寝ることにする。

一応何かが召喚されて襲ってくる場合だと寝ている最中に襲われて嫌なので、周囲に警報を鳴らせる仕組みを張り巡らしてから就寝する。




そして、気が付くと、ウィリィンは今日潜ったような洞窟の中にいた。


「ええ!?

ここどこ!?さっきまで寝てたのに!?」

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