第159話宝箱

「ま、それは置いといてー、ドロップ品を回収しよっか。

オークの心臓なんだろうけど、なんか色々混ざってるねー」


フェアが指さす場所には何やら心臓から翼やら、獣の手の先の部分やらスライム状の何かが出ている得体のしれない物質があった。

なお、時折脈動しており、生きているのではないかと思ってしまうほどである。

キメラオークを倒した時にドロップした物質ではあるが、今日一番不気味な見た目をしている。


「えっ、これバックの中に入れるの・・・?」


「はい、瓶。

これなら漏れ出ないから大丈夫―。

でも、中で潰れちゃいそうだね、あ、スライムのドロップも一緒に入れておけばいい緩衝材になると思うよー。

お互いに干渉はしないはずー」


「わ、分かった」


ということでウィリィンはドロップした心臓が入るぐらいの大きさの瓶を受け取り、その中に少し前に瓶詰したスライムを半分ぐらい入れる。

そしてその中に慎重に風で浮かせて心臓を入れ、その後に瓶の中を満たすように更にスライムを流し込む。

そして瓶の中身が満たされれば蓋をして、バックの中へと入れた。


「それに、宝箱も気になるねー。

流石にこれだけの戦いが必要な相手だったから、あると思うよー」


「うん、流石にこれ以上はもう歩き回りたくないかな・・・」


ということで曲がり角の方へと足を進めるとそこには宝箱が鎮座していた。


「「おおー」」


「ようやく見つけた・・・」


「さてと、トラップの類はー、仕掛けられてそうだねー。

ウィリィン、ちょっと離れててね、すぐ解除するからー」


というとウィリィンはピッキングツールを取り出し、作業を開始した。


「なるほど、なるほどー、そこにワイヤーがついてて、ここに連動しているわけねー。

ってここ魔法的な仕掛けがあるのに壊れてるなー?

あー、オークの咆哮で壊されちゃったのかー」


「それって、中は大丈夫なのかな・・・?」


「宝箱自体は結構密閉性も高いし、頑丈だから、大丈夫だと思うよー。

よしっこれで罠は無効化できたかなー。

ウィリィン、開けていいよー。

初めての宝箱だね」


宝箱の仕掛けを解除し終えたフェアが宝箱を開けるように促してくる。


「で、では失礼して。

中身はー、鈴?」


中には見るからに禍々しい骸骨や怨嗟の顔が掛かれた鈴が鎮座していた。


「うーん、ただの観賞用の鈴のわけがないからー。

確実に鳴らすと何かしら起こりそうな気がするねー。

鳴らしてみたい気もするけどー、危ないかもしれないし、帰ってからにしようかー」


「えっ、持って帰らないという選択肢は・・・?」


「せっかく手に入れたんだし勿体ないよー。

鳴らす前にお母さんに鑑定してもらってからにするからー」


「わ、分かった」


「ただ、勿論、道中で鳴らないようにちゃんと保管するよー」


と言うとフェアは鈴の中心部分が周りの金属部分に触れないように綿状の物質を詰め始め、

外側の部分も同様に綿で覆い、大量の緩衝材が入った木箱の中に入れて、蓋をした。


「これは、私が持っておくねー」


「お願いします」


禍々しいオーラも放っていたし、なるべく近くで持っていたくなかったので、ウィリィンは安堵する。

まあ、持ち帰りたくないと言ったのと、その時の表情でウィリィンの内情はフェアに十分に伝わっている気は十分にするが。


「んじゃ、休憩所まで進んで、そこから戻って帰ろっか」


ということで、あとは次の休憩所まで進み、道中では何度か魔物に遭遇したものの、そこまで脅威となりうるものは存在せず、休憩所へと到着する。


「んお!?隠れてるねー」


休憩所には先客がおり、2体のシャドウキャットがいたものの、瞬殺し、一度休憩を取る。


「ふう」


「そういえば、食堂で甘いもの貰ったんだけど食べる?」


「食べる」


すると渡されたのは蜂の子を揚げたものを蜂蜜でコーティングしたスナックであった。


「ああ、これまだ残ってたんだ・・・」


これはラドとフェアと三人で山に登った時に戦ったクレイジービーの蜂蜜と蜂の子だろう。


「たまーに食卓にも上がってたけど、これでほぼ使い切ったって言ってたよー」


「この味が食べれなくなるのはそれはそれで寂しいような・・・」


「ま、街に行けば売られてるし、また取りに行ってもいいしねー」


ということで少し間食も挟み、エネルギーの補充もできたところで、来た道を最短ルートで引き返していく。

まあ、道中は通ってきた道であるので新規のトラップの類もなく、魔物も補充されていない場所が多かったため、スムーズに変えることができた。


「お、出口だねー。

すっかり夜だから眩しくなくて良かったねー」


「ふう、何だか開放的で安心感ある・・・」


2人はずっと目に魔力を込めて暗闇に適応させていたので、眼に集めていた魔力を解除し、普段の状態に目を慣らしてから帰り用の魔法陣へと乗り、帰還を果たすのであった。


「んじゃ、取り敢えずかなり動いたからお風呂入って、その足でご飯食べて、報告はその後にしよっか」


「はーい」


ということで湯舟に浸かり、その日の汚れと、疲れを取り、食事を取って英気を養うと、ルリウィンのいる執務室へと向かう。

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