第153話宝箱探し

戦いに精一杯のところはあったが、少し違和感のようなものは感じていたのでそれに納得のいく理由が分かったことで胸のつっかえが取れたように感じられる。


「いやーごめんね、なんかもやもやさせちゃったみたいでー。

目標のドロップもあと1個だし、頑張っていこー」


「おー」



「さてと、流石に宝箱の位置は地図じゃ分からないからねー、片っ端から行き止まりの所へ向かうしかないんだけど、待ち伏せに気をつけてねー」


宝箱が置いてある場所は行き止まりの所にしかないのだが、ない場合もある。

更に遠くから宝箱があるか否か視認できないように行き止まりの直前には必ず曲がり角が設置されている。

ということはかなり奥の方まで歩く必要があるわけだが、それ即ち誘い込まれたのと同義だろう。


「あちゃー、ここにも無かったねー」


行きはスイスイ行かせてくれるのだが、いざ帰ろうとすると


「正面から棘付きの壁が迫ってきてるぅぅぅぅ!?」


棘は帰り道を塞ぐように展開されており、逃げ場はない。

行き止まりの曲がり角の部分は棘が起動した時点で壁が奥からせり出てきて塞がってしまった。


「うーん、破壊して通るしかないかなー」


「このせり出た壁?それとも棘?」


「棘の方。

だって、やり過ごしても元の場所に戻っていくとは限らないからねー」


「了解っ」


ウィリィンは金棒を取り出すと魔力を注ぎ、高速でスイングする。

更に衝撃の瞬間に魔力を開放し、金棒の先端を肥大化させ、強烈な一撃を叩き込む。


バコーン


とてつもない音と共に棘はひしゃげ、当たった部分はへこみ、ひび割れてはいるが、破壊には至らなかった。

だが十分に亀裂は入れた。


「後は任せてー」


拳に力を集めたフェアがウィリィンが当てた部分へと飛び出すと、勢い良く突き出す。


ドーン


という音と共に棘の壁の一部は粉砕され、穴ができた。

ただ、棘がこちらに迫ってくる機構はまだ生きているようで早く穴から抜けたいのだが、


「待ち伏せ!?」


穴の反対側からはゴブリンとバットが数体見え、コチラが脱出しようとしているのを見つけると風の刃と弓矢で穴を狙い撃ちにしてくる。


「うーん、チューニングより先にぺちゃんこにされる方が先だねー。

閃光でゴブリンの動きは鈍らせられそうだけど、バットは仕方ないねー。

ウィリィン、しっかりついてきてね、3秒後に閃光を放つよー」


フェアは閃光を放ち弓矢が飛んで来なくなったタイミングで穴へと走り出す。

風の刃はシールドとシールドも直ぐに壊されてしまうので拳で弾く。

ウィリィンも同様にシールドをフェアの前に展開するが直ぐに壊されてしまう。

だが、通り抜けるだけの時間を稼ぐのには十分であり、少々2人とも攻撃を貰ったものの、動きには支障はない。


「さーて、反撃といきますかー」


「無駄骨だったし、痛いし、凄くヒヤッとした。

許さぬ」


ゴブリン達は閃光から回復しているが、時間によって有利になるのはあちらだけではない。

チューニングを完了させたフェアが超音波を放つとバット達は墜落する。

いきなり落ちたバット達に動揺したゴブリン達を片付けると、バット達も同様に倒した。

そして、ドロップとしてウインドバットの翼が出た。

また同様に最初から翼の部位しか無かったかのような断面であり、布越しに触れると生暖かい。


「これは...?」


「風の魔力を気持ち多くに宿してるから、そういう時に触媒として役立つよー」


「なるほど...」


取り敢えず布で厳重に巻いて、リュックの中へと入れた。


「そういえばウィリィンは傷は大丈夫ー?」


傷つく事にかなりの抵抗があるウィリィンを気にかける。


「これぐらいなら、直ぐ治っちゃうし」


「おーたくましくなったねー」


少々とは言うが、ナイフで切りつけられたぐらいの傷ではある。

ウィリィン自身が鍛錬によって傷による痛みに慣れ始めているのと、種族的、魔力による治癒能力が影響しているのだろう。


「これでドロップは3つ集まったわけだけれども」


「宝箱が見つからないねー」


行き止まりの所まで行くことこれで3回目である。


1回目は何故か床がベルトコンベア状になっており、更に洞窟内にも関わらず正面から強風が吹き付けており、走っても走っても中々前へ進めなかった。

これほどのトラップにも関わらず宝箱は無く、帰ろうとすると今度は風とベルトコンベアの向きが逆になっており、再度走る羽目になった。


2回目は宝箱が設置されていたのだが、トラップや魔物の類も一切おらず、怪しさ満点であった。

そして開けようとすると檻が降ってきて二人を閉じ込め、更に宝箱自体が爆発した。

2人は檻が降ってきた時点で宝箱を放棄し、檻を壊して逃げ出したため事なきを得たが、心臓にとても悪い出来事であった。


それで、これで3回目のわけであるが、そうもないものなのだろうか。

まあ、無いものはないのでどうしようもなく、できるのは次に向かうことぐらいだろう。


「さてと、次行こっか」


「あい」


そして次の行き止まりの前にはゴブリン1体とバット、スライム3体、シャドウキャット2体に2回り洞窟ギリギリの大きさのオーク1体がいた。

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