第152話鉄球の正体
なお、走っていれば当然他の魔物たちにも遭遇するのだが、構っている余裕はなく、適当に攻撃をいなして、無理やり横を通り過ぎている。
ちなみに球は敵味方関係なく当たったものを押しつぶしている。
そしてこの球のタネについて考えていたフェアはついに真相に気付く。
「ああーなるほど、そういうことねー。
ウィリィン、あの球魔力で調べてみてー」
ウィリィンはフェアに言われた通り魔力を伸ばし、球を見てみると表面こそ金属で覆われているが、
「これ、中に大量のスライムが詰まってる!?」
球の内側は空洞となっており、その中に大量のスライムが詰め込まれており、そいつらが息を合わせて内部で回転することで球の回転を維持しているようだ。
更にスライムは視力によってこちらを認知しているわけではなく、魔力を感じ取ってこちらを認識しているため内側からこちらの様子を把握しており、その影響でこちらが曲がったりしても追いかけ続けること可能にしている。
まあ、問題はこの状況をどう打破するか?と言うところなのだが。
「ウィリィン、電撃いける?
球の金属、電気の通りがいいよ」
「なるほど、いきます」
フェアはついでに球の金属について調べていたが抵抗の少ない金属で作られていることを確認した。
それを伝えられたウィリィンは球に対して雷撃を放つ。
すると電気は中の金属を通じて中のスライムへと伝わり、死滅させていく。
一部異常を察したスライムが球を溶かし、逃げようとするが、時すでに遅く、球の内部にいたスライムは全て倒された。
これにより制御を失った球は急速に速度を落としていき、停止した。
一部かけた球の中からはブヨブヨとしたゼリー状の物体が残っており、
「お、スライムのドロップだねー。
体組織の一部で水分が飛んじゃうと固まっちゃうから瓶詰しておくといいよー」
フェアはバックの中から瓶を取り出す。
「おー、これは何かに使え?」
「ゴブリンの耳よりは。
この状態だと薄いけど酸があってものと反応しちゃうんだけどそれを中和してあげると、大体のものに混ぜれるようになるから、粉末をゼリー状にしたいとか、そういう時におすすめー」
「な、なるほど」
ウィリィンはパッとはゼリー状にしたいものが思いつかなかったので、取り合えず相づちをうって、スライムの体組織を今聞いた話、酸があるそうなので、素手で触れないように風の魔法で浮かせて瓶へと詰めると、コルク栓で蓋をし、リュックへと入れた。
あと、トラップとしては
槍や弓矢が出てきたり、
「あぶな!?
戦いの最中にゴブリンが何かやってきそうだったら注意しよう・・・」
他の魔物に気を取られていると当たりそうになる。
特にゴブリンがタイミングを見て主導で起動するタイプは隠密性が高く、分かりにくい。
普通に感圧式や、魔力感知式も個数が多かったりすると意外と厄介であるが、逆に魔物に対しても利用できるわけで、積極的に狙うようなことはしないものの、利用できるときは相手の虚を突くことができるのでかなり便利であった。
利用回数や、その立ち回りに関してはやはり断然フェアの方がウィリィンと比べ物にならないほど上手であり、流石本職である。
あとは、シンプルに曲がり角など死角の部分にシャドウキャットが潜伏しており、奇襲を仕掛けてくることがあるが、魔力による探知によっていること自体は把握できるため、奇襲を防ぎつつ、反撃を入れることで対処した。
そして、ふとウィリィンはある疑問を感じる。
「ねえ、フェア姉、今日のダンジョン攻略、何か自身に何か制限を課してやってる?」
「おっとー。
気付かれちゃったかー。
ちなみにだけど、具体的にどのようなことを縛ってると思うー?
あと何で気付いたのー?」
「恐らく、魔力を使ったトラップの使用・・・いや、それだけだと弱いな。
魔力を利用した直接的な攻撃はしないとかかな?
魔力で自身を強化するとか、超音波は補助的な使い方だからセーフみたいな感じ。
超音波はほぼ攻撃近い気がするけど、認識を誤らせているだけだからかな。
気付いたのは、フェア姉が得意とするトラップを利用した立ち回りをしていないこと。
厳密にはワイヤーとかは使用してるんだけど、時限式の爆弾とか作ったりとかはしてない。
あとは、雷撃を自分でやらなかったこと。
電気の使い方はフェア姉よりはうまいかもしれないけど、あのレベルだったら自分でやった方が速いかなって」
ウィリィンは自分の推論を述べる。
「いやー。
ウィリィン、正解だよ。
お母さんから魔力は補助的な使い方だけに制御して取り組んで来いって言われててねー。
なので、直接的に魔物に魔法でダメージを与えるのは禁止されてます。
ウィリィンに対しては気付かれるまでは黙っておけというお達しを受けていたので、聞かれるまでは喋れなかったんだよねー。
恐らくだけど、観察力とかを養ってほしいのかな?
ま、ただし最優先は二人とも死なないで帰ってくることなので、ヤバい相手に対してはしっかり解禁するから大丈夫―」
「そのような事態に陥らないのが一番いいんだけどね・・・
でもなんかスッと納得できたから良かった」
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