第150話オールスター

「おーと、ウィリィンが一体倒したのに私が何もやれないのは少々気まずいねー。

オークはとれなかったけど、皆に指示してるお前はやっておこうかなっ」


フェアは飛び込んできたゴブリンに狙いを変える。

それに気づいたゴブリンは急いで後方へと退避しようとするが、いつの間にかゴブリンの真後ろにワイヤーを設置しており、それに足を取られたゴブリンは転んでしまい、そのままフェアに倒された。

それぐらいのタイミングで視力が回復したオークがフェアとウィリィンに対して攻撃を仕掛けてきて、他の遠距離攻撃もされるため、一端距離を取る。


「うん、結構いい感じに倒せたんじゃない?」


「そうだね、遠距離攻撃が鬱陶しいけど」


すると今度はオークが二人に対して詰めてきて、他の2体に近づかせないような立ち位置を取り始める。


「いやー、前衛としての責務を果たそうとする姿は素晴らしいんだけど、もう、仕込みは済んでるんだよねー」


すると、後ろにいるスライムは石のように固くなっていき、バットはふらふらし始めたかと思うと壁へ自ら衝突し、墜落した。

フェアはそれに動揺したオークに素早く詰め寄るとガードされるより速く急所に攻撃を入れ、オークを倒し、ウィリィンは隙だらけになったバットとスライムを処理した。


「ふう、うまく勝てた」


「いやー、策がうまくはまって気持ちよかったねー」


ちなみにバットとスライムに何が起きたかというと、接近した際にスライムはウィリィンによって凝固剤をかけられ、液体成分が固形化し、動けなくなってしまっており、バットは魔力で感覚を強化し、超音波を感じ取れるようにしたフェアがバット自身の発している超音波と同じ周波数になるように音を出力し、反響を利用した位置情報の取得を困難にし、平衡感覚をバグらせることで墜落させた。

その後は知っての通りである。

これで、一通りの敵の強さについて実践的に感じ取ることができたわけだが、


「うん、策が綺麗に嵌れば何とかなりそうだけど、これ連携されるとかなり戦いづらそう・・・」


「そうだねー。

数もこれ以上になるかもしれないしー、今回はなかったけど、トラップの類も意識しないといけないからねー」


まだまだ意識しなければならないことは多い。

そして、もう一つ朗報が、ドロップ品としてゴブリンの耳が落ちていた。

耳は元々その部位しかなかったように切れ目などがない綺麗な状態になっている。

ウィリィンは恐る恐る布でくるんで耳を拾い上げる


「うわ、生暖かくて気持ち悪い・・・。

フェア姉これ、何かに使えるの・・?」


「いやー、微妙。

魔道具とか、魔法役を作る時の触媒とかにはなるけど・・・、内蔵している魔力とか、あんまり多くないし、素材としても別段と特殊な効能があるわけでもないねー。

ま、取り敢えずは初めてのドロップということでバックの中に入れといてねー」


「はい」


ウィリィンは布で厳重にくるんでリュックの中に入れた。

まあ、ただ単に気持ち悪く、ないとは思うが、リュックの中が汚れると嫌なので。

そして二人は再度歩き始めた。

すると今度はオーク2体と明らかに壁に触れているゴブリンが現れた。

タイミングを探っているのか、まだトラップの起動はされていない。

ウィリィンは何も気づいていないように装いながら魔力を展開して周囲を探り、どこに魔物が隠れているのか探る。

すると天井に複数の反応があったので、入り口を念入りに固めるべく動くのと同時にフェアがオークたちに迫る。

ゴブリンは慌てて壁を操作するが、時すでに遅く、天井は固められており、開くことはない。

バレない様にトラップを防ぐことを優先した都合上、閃光を合わせるタイミングがなかったので使用はしなかったが、ゴブリンが慌てたタイミングでナイフを投げつけ、注意が散漫になっているゴブリンを仕留めようとするが、オークがそのナイフを体で受け止め、防いでくる。

なお、刺さったナイフはそのまま抜かれると傷は既に癒え始めている。


「流石の回復力だねー。

ウィリィン、一体任せるねー。

こんな感じで急所以外の攻撃は結構簡単に回復されちゃうから気を付けてねー」


「了解」


2人はオーク一体ずつを相手取る。

脅威なのは繰り出される攻撃ではなく、圧倒的な回復力であり、オーク自身もそれを理解しているのか、かなり耐久重視の立ち回りをしてくるため、急所を狙えない。

足の腱を狙って機動力を削いだり、腕を上手く弾いたりとガードを崩そうとはしているものの、いいのが決まりそうになるとゴブリンが介入してきて、小刀や弓で攻撃を仕掛けてきたり、オークに注意を飛ばしたりしてくる。


「こざかしい・・・」


当然ターゲットをオークからゴブリンに変更しようとすればそれを塞ぐようにオークが立ちふさがる。

個体数は先ほどよりかなり少ないのにも関わらず、なかなかうまく倒せない。

オークの攻撃自体は遅く、大ぶりのため、油断していなければ避けれるレベルではあるものの、攻撃力はウィリィンよりは上である。

そのため、攻撃はかわすか、軌道を逸らすように受け流す必要がある。

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