第149話シャドウキャット

救いとしてはそこまで発散範囲が大きくないため、なんとなくどこにいるかは想定が可能という点だろう。

キャットはほどなくして華麗な身のこなしでウィリィンへと迫り、攻撃を仕掛ける。

ウィリィンは自身へ接近してくるもやへ対して防御態勢をとるが、それはフェイントであり、全く別の方から爪が伸びてきてウィリィンへと振りかざされる。


「っち、もやと身体の動きは一致させないこともできるのかっ」


ウィリィンは咄嗟にシールドで身を守ることでことなきを得る。

がシールドに再度反対の爪が振りかざされるとシールドは砕け散ってしまった。


「っつ、シールドも耐えないかっ。

だが、」


キャットは再度もやに隠れてフェイントを交えながら攻撃を繰り出すが、ウィリィンはその全てを的確に捌いていく。

依然としてキャットを的確に視認することも、魔力で把握することはできていないが、キャットは先ほどウィリィンが生み出したシールドに触れた。


「マーキングしておいたから、前足の位置は把握できるんだよっ」


その際にウィリィンの魔力を付着させ、目印とすることで、爪の位置から大体のキャットの位置を把握することに成功する。

あとはそれに合わせて、攻撃をいなしながら、隙のある胴体に対して的確に金棒で攻撃を加えていけば、無事に倒すことができた。


「っち、分かると言っても爪の部分だけだったし、流石に頭部とかは狙えなかった・・・」


流石に完璧に全体像を捉えるまでには至っていなかったので、外すぐらいならと、着実に金棒を当てることで弱らせ、倒したのであった。

そしてウィリィンが少し一息つくと


「あ、ごめんウィリィン一体そっちいったよっ」


フェアから警告が飛ぶ。

慌てて辺りを見渡すと黒いもやがこちらに迫ってくる。

ウィリィンは咄嗟に強い光を放ち、目くらましを行う。

すると、キャットの視界を一時的に奪うだけでなく、もやを打ち消すことにも成功し、視界の無い状態で振るってきた爪を楽々とかわすと、その間に一体目の処理が終わったフェアが駆け寄ってきて、ウィリィンが対峙していたもう一体を始末した。


「見た目と名前通り、光で打ち消すことができるのか」


「そうだけど、目がちかちかするのとー、目立つんだよねー」


フェアが少々目をこすりながらウィリィンに声をかける。


「あ、周りの事何にも考えてなかった・・・。

フェア姉、眼大丈夫?」


「普段ならそう大したことないんだけど、やっぱ暗い所に慣れてくるとねー。

ちょっと効いたかも。

ま、次の戦闘までには回復してると思うよー」


光での攻撃は不意打ち気味に決めるのが一番効果的であるが、そうなるとフェアとの連携が取りづらい、ただ、ここはほぼ光のない洞窟であるため、多くの魔物には有効な手段となりえそうだ。


「うーん、フェア姉に合図を送れたとしても、眼をつぶれる状況とは限らないし、それは自分も然り・・・」


「最初の一発目で使用すればいいんじゃない?

不意を突かれていきなり戦闘が始まったりしない限りは、確実にお互いに目を守る余裕はあるからねー。

初動で動きを封じているうちに何体か倒しておければその後の戦いもスムーズに進められると思うよー」


「なるほど、じゃあ、そういう段取りで」


次からは初手に閃光による攻撃から入ることにした。


そして、またしばらく歩いて現れたのはオーク、スライム、ゴブリン、ウインドバット、シャドウキャットによるオールスターであった。


「とてもバランスが良さそうなチーム・・・」


「気を引き締めてねー。

トラップの類はなさそうだけど、単純に連携がうまいから。

んじゃ、閃光行くよっ」


フェアが閃光を放って視界を奪うことで戦いの火蓋が落とされる。

ちなみに効いたのは、オークとキャットのみ。

スライムは目の類がないため、効かず、バットには目が付いているはずだが、超音波を利用した反響などで周囲を把握しているのか、影響はあまりなさそう。

そしてゴブリンだが、オークの陰に隠れていたため、視界を奪うほどの光を与えることはできなかったようだ。

バットとスライム、ゴブリンがそれぞれ風の刃と、酸、弓を飛ばして攻撃を仕掛けてくる。

フェアとウィリィンはそれを弾き落としながら、距離を詰めていくわけだが、かなり威力が上がっている上、数も増えている。

それでも攻撃を受けずに距離を詰め切り、フェアはオーク、ウィリィンはキャットに狙いを定め、急所をついて一撃で倒そうとするが、


ギギギ


ゴブリンが叫ぶと、オークは急所を手足で覆うようにガードを固め、キャットももやを生み出して狙いを定まらせないようにしてくる。

フェアは腕を蹴り上げてガードを崩し、ナイフで心臓を貫こうとするが、蹴り上げたタイミングでゴブリンが短刀をもって飛んできてナイフを弾くように立ち回る。

当然フェアの方が腕力があり、ゴブリンによって逸れたのはほんの少しではあったが、心臓からはずれてしまった。

一方ウィリィンは見えないならばと剣を取り出し、高出力で様々な魔法を纏わせ、力強く振り、シャドウキャットを真っ二つにした。

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