第148話お弁当
ウィリィンは発泡スチロールのような軽い素材で岩のような見た目の物質を作り、あたかも穴が塞がっているように偽造する。
フェアはもう一つの出入り口に布をかけて、魔法をかけることで埋まっているように偽装した。
「んじゃ、食べよっか」
2人は戦闘の汚れをフェアが持ってきたウェットティッシュで拭い、食事の準備を始める。
フェアはバックからレジャーシートを取り出し、地面へとひくと、その上に座り、弁当を取り出す。
「フェア姉、準備いいね」
「そんなに嵩張るものでもないからねー」
同じくウィリィンも弁当を取り出し、食べ始める。
もぐもぐと食べながらウィリィンは食後の予定について聞き始める。
「フェア姉、今日は目標とかって決まってるの?」
「あー、伝えてなかったっけー?
ここより奥の所で魔物からのドロップを3つ以上、宝箱を1つ以上見つけてー、次の休憩地点まで辿り着いたら帰るよー」
思った以上にミッションが多いなと感じつつも疑問点について尋ねる。
「ドロップは今のところ1個もでてないけど...。
それに宝箱は1個も見かけてないよ?
あと、帰る時は魔力払って帰るの?」
「大丈夫ー。
ここより先はガラッと魔物の強さが上がるからねー。
その分ドロップもしやすくなるよー。
宝箱は休憩地点までの最短ルートには設置されないようになってるから、ちゃんと横道に逸れれば見つかるはずー。
帰りは消耗度合い次第かなー。
基本はダッシュで帰るつもり。
余力を気にしなくていいし、一度倒した道ならそんなに魔物も現れないからそんなに大変じゃないはず」
「なるほど、取り敢えずは目標達成を頑張ります」
「そうだねー。
ま、せっかくの戦利品が持って帰れないのは勿体ないし、死なないように注意はしっかり払うよー」
「ちなみに、どれぐらい変わるの?
ここから先」
「んー?
具体的な表現が難しいけどー、
引きが悪いと私とウィリィンが真剣に連携を取らないとやられちゃうぐらいかな?」
思った以上に強くなるようだ。少し食べるのを止めてフェアの表情を伺うが、含みのある顔はしていない。
「そんなに...?」
「そんなにだねー。
今までのはウォーミングアップ程度に思っておいた方がいいよー」
今までもヒヤッとする場面は何度かあったが、これでもチュートリアル程度の難易度であった事に少々困惑する。
「いきなり強くなるんだね。
あと、何がそんなに強くなるの?」
「休憩地点を境に大きく変化するみたいだねー。
何が変化するかというと、出てくる魔物は更に1種類追加されるだけで変わらないんだけど、全体的に能力が向上するよ。
オークだったらよりタフになるから中々攻撃が通らないし、ゴブリンならより狡猾になるし、素早さや器用さが目に見えて上がるねー」
「なるほど。
それで追加される魔物というのは?」
「シャドウキャット、暗がりに潜んで奇襲を仕掛けてくるよー」
「ちなみに、この部屋の中には・・・?」
「いないよー。
完全に見えなくなるレベルではないから安心していいよー。
ただ、奇襲特化でないぶん、スピードとか、タフさとかあって、攻撃に参加してくるけど。
戦闘中で注意が分散され始めた時に不意を突かれると厄介かなー」
「なるほど」
完全に不意打ち特化の魔物ではなく、前衛として攻撃に参加しつつ、意識が散漫になってくると身を潜めて、攻撃を仕掛けてくるのだろう。
「んじゃ、大体イメージは掴めたかなー?」
「おそらくは、他の魔物の強さの上がり具合はちょっと分からないけど」
「ま、それもそうだねー。
あ、トラップも殺傷能力上がるから気を付けてねー」
「はい」
そうこうしているうちに二人はお弁当を食べ終わり、この後の戦いの支度を整える。
「よし、じゃあ、準備はいい?
あまり離れないように付いてきてねー」
「うい」
フェアは塞いでいた布を取り外すと休憩地点の外へと歩みを進めた。
すると、早速姿を現したのは見たことの無い魔物、暗いのも相まって輪郭がぼやけて見えるが、大きな猫のようなシルエットをしており、これがシャドウキャットなのだろう。しかも同時に3体現れ、道を塞いでいる。
「うーん、一体ずつというわけにはいかないかー。
私が2体引き付けるけど、ウィリィンの方に行くかもだから、気を付けてね」
「了解」
フェアが飛び掛かるのを追いかけるようにウィリィンもキャットたちに迫り、フェアから一番離れている一体を分断するようにフェアとの間に身体を割り込ませ、一対一の状況を作る。
分断したキャットに向き合うと、相手はこちらに飛び掛かってきて鋭い爪を振りかざす。
「うおわ!?」
ウィリィンは金棒を盾にして攻撃を防ぐが、防いだ反対側の爪で追撃をしようとしてきたため、力を入れて爪を押し返し、後方へと下がる。
すると、キャットから黒い何かが放出され、身体の周囲へと広がることで周囲と同化し、シルエットがあいまいになっていく。
「っち、このもや、魔力か、分かりづらいな」
眼では見ることが難しいので、魔力を感じ取って実態を把握しようとしたが、発せられているもやはキャットと似通った魔力でできており、同様に捉えることはできない。
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