第147話休憩地点
オークの背後まで攻撃を貫通させる威力は出していないので、必然的に距離を詰められるわけだが、スライムや、ゴブリンの小刀による攻撃が少々厄介であった。
オークが複数体で完全に通路を封鎖して、バットで攻撃。
オークが守りに徹することで、バットに近寄らせないようにしたり。
「いやー、あれだけ防御を徹底されちゃうと急所に攻撃は通せないかなー」
「フェア姉ちょっとやってみてもいい?
多分いけると思う」
ウィリィンは金棒を取り出すとオークの頭目掛けてフルスイングし、ガードした腕の上から頭に強い衝撃を与えた。
オークの頭を変形させるまでは行かなかったが、衝撃は十分に脳まで到達しており、脳震盪より気絶させる事に成功する。
「っち、即死までは行かなかったか」
「おー、ウィリィン素の力も上がってきたねー」
フェアは褒めながら隣のオークに足払いをかけて、防御を崩してから、急所に一撃を入れていた。
そして、残りのオークが動揺したのを見逃さず、ダガーによる一撃を心臓に差し入れ、フェアも同様に流れるように周りのオークを殲滅し、残りのバットは追いかけて倒した。
気絶したオークも他のオークが全滅した段階で倒している。
「うーん、やっぱり一発入れて防御を剥がさないと難しいね」
「あ、さっきのはそういう...」
ウィリィンは急所での攻撃では倒すことができないので、オークのタフさに正面から挑み、有効打を入れて弱らせて、その流れで倒すといった感じを想像していたが、急所を突くのに一旦一手間、攻撃を入れて、防御を崩す必要があるという意味だったようだ。
「もうちょっと深い所だとそういった戦いになるよー」
あとはオークの集団が前後から挟み撃ちしてきたり、
「あ、トラップ止め壊されちゃった」
「オーク相手にはもっと頑丈に作った方が良さそうだねー」
事前にトラップについては認識していたものの、オークの力を見誤っており、集団で左右の壁に隠れていたオークの集団はゴブリンがタイミングを見てトラップを起動したのにも関わらず開かないのに対してタックルをかますことで塞がっている部分を無理やり破壊し、外へ出てきたのだ。
そしてこちらを見定め、正面で道を塞いでいるオークたちとも目配せをすると、隊列を組み、突進してきた。
「いやぁぁぁぁぁぁ!?
逃げ場がないぃぃぃぃぃぃ!?」
ウィリィンは絶叫しながらフェアにしがみつく。
天井も人一人分もないため、通るのは難しく、しっかりと急所の類は守りながら迫ってくるため、急いで倒すこともままならない。
このままではオークたちと熱い抱擁を交わすことになる。
「そおおい」
フェアは飛び出したかと思うと、魔力をふんだんにこめた拳を正面にいたオークたちに放ち、隊列をまるごと吹き飛ばす。
「ウィリィン、別に魔力を使うなとは言ってないよー?
ま、これは使いすぎだけどねー」
フェアはウィリィンの方へと向き直りながら告げる。
「あ、そうだった」
ウィリィンは後ろから迫ってくるオークたちの足元に岩を出現させて、転ばせる。
そして、転んで背中を晒しているオークの上へと素早く詰め寄り、心臓を一突きすることでオークを殲滅した。
「魔力の節約はマストじゃないからねー。
さすがにあれとハグはしたくないでしょー?」
そういうと、ウィリィンはブンブンと首を縦に振り肯定する。
「アスレチックとか、魔力の使用がほんとに禁止な環境もたまにあるから、その影響もあって、使わない時は使わないモードになっちゃうんだよね・・・」
「魔力に限らず何かを禁止された状態で戦うことは割とあるからねー。
そっちに慣れておいた方がいいよー。
選択肢から完全に除外しちゃうのは良くないけどねー」
確かにルリィウィンが行った城落としに参加した兄妹達とのタイマンでは禁止事項に触れないように立ち回ることを縛りとして課していた。
それを監視していたのは魔道具であったが、こちら側の動きをトリガーに攻撃やら仕掛けが作動する場合もあるのだろう。
そして、縛りに囚われ過ぎるとそれはそれで立ち回りが制限されてしまう。
ケースバイケースで縛りを破った方が良い場面というのは確実に存在するので、意識から完全に除くのは悪手であるのだろう。
「なるほど。
もっと柔軟に立ち回らないとな...」
そんな感じで喋りながら進んで行くと少し広いスペースへと辿り着く。
「お、休憩地点だね。
お昼ご飯にしよっか」
ここはダンジョンの中に所々ある魔物が沸かない場所であるそうだ。
トラップの類も存在しない。
まあ、沸かないだけで入ってくることは可能だそうだが、それさえ気をつければ襲われる恐れのないスペースであり、文字通り休憩できる。
また、ダンジョン内を行き来できる機能も設置されており、基本的に休憩地点とセットで置かれていることが多い。
「出入り口は塞いどいた方がいい?」
「そうだねー、流石に食事の邪魔はされたくないし、適当にこちらが見えないようにしておけばいいよー。
別に頑丈なもの塞ぐ必要はないよー」
「了解」
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