第12話組手2

(しかしだ、切った手札は相手にも利用されるぞ、このようになぁ)




ルリウィンはウィリィンが打ち出した泥を手に集め、こちらに向かって投げつけてきた。


投げ返された泥玉がこちらに向かって凄い勢いで飛んでくるが、アウィリィが危なげ無く避ける。




(っち、魔力なしだとあれに当たると面倒だわ)




ウィリィンは状況を改善するために考える。


水と土の比率、土の粒の大きさを調整し、再度放つ。ルリィウィンがそれをキャッチするが、




(ほう、粘性度を上げて、手から離れづらくしたか、良い判断だ。だが?)




ルリィウィンはアウィリィの拳を泥まみれの手で捕らえる。


その瞬間、泥が飛び散り、こちらに向かって飛んでくる。


咄嗟にバリアを展開し、アウィリィの顔にかからないようにガードする。




(おお、良い反応だ)




粘度高めの泥攻撃とバリアで反撃を防ぎつつ、更なる手を考える。


そしてふと思い当たる。


自身が発射する分には威力が足りないが、先程泥を投げ返してきたみたいにこちらから投げれば?と。


そこで手のひら大サイズの石を作成し、2人が距離を取った瞬間にアウィリィに渡す。




(これ使ってみてください)




(なるほどね、もはや組手と言えるか怪しいところだけど、有効的な手段っよ)




投げられた石が豪速球となってルリィウィンへと飛んでいく。


それを彼女が拳で粉砕するも、構えを解いた。




(おお、良い連携だった。一旦小休止としよう。


特に最後のは良かった、自身に足りない部分、活かせる部分をうまく見定めた攻撃だった。)




(そうね。練度に関しては反復あるのみだから、この調子で頑張っていきましょう)




(よし、それでは30分ほど休んだら交代でもう一回だな。


今日はそれが終わったら修了としよう)




話が終わると緊張の糸がほどけ、一気に疲れや痛みが襲ってくる。


目で追うので精一杯な速度で動き回り、たまにこちらにも拳が飛んでくる。


アウィリィが逸らしてくれるものの、身体ギリギリを凄い勢いで掠めてくる衝撃は肝が冷えるどころではない。


それでいて、この組手は彼女らにとって軽くでしかないのだ。




(フィジカルだけでもこの次元....)




(これぐらいであればウィリィンでも5歳にでもなればできるようになるだろう。)




(そうね、まだ私達基準だと準備運動レベルだし)




(準備運動....)




その言葉に絶句するしかなかった。




ただ、自身の行動が彼女達の手を煩わせることに繋がっているのも事実。


先程の攻防を思い返し、良かった点、悪かった点を考える。




(おっと、反省会は私達も混ぜてもらえるか?


他の目線でどう感じたかも攻撃を評価する指標になるゆえ。


因みに泥を攻撃手段として選んだのはかなり鬱陶しかったぞ、


目に入ろうものなら視界が妨害されるし、肌に張り付くからな)




(ただその泥まみれの手で攻撃されるとこちらも滑ってガードしにくくなるからちょっと大変だったわね。


泥が跳ねるのもバリア貼ってくれてなかったら結構面倒だったわ)




(なるほど、勉強になります。)




(因みにどうしたら良かったかという部分にはなるべく自力で考えよ、正解は無限にある。


それを私達の言動で狭めてしまうのは勿体無いゆえ。


それに我々が与えた解では真にお主の戦い方とは言えぬだろう?


まあ、最初は真似することから始めるのは大事ゆえ、色々な技術を見せる用意はあるぞ)




(は、はいありがとうございます。)




そんな感じで反省会を行い、今度はルリィウィンに抱えられ、組手に参加することになった。




(それでは、始めるぞ。


因みに私はアウィリィほど優しくないのでな、結構振り回すゆえ、覚悟しておけ?)




(え?、ほわぁぁぁぁぁあ!?)




ルリィウィンがアウィリィに対して突っ込んだかと思うと、次の瞬間ウィリィンを真上に投げ飛ばした。


アウィリィは投げられた彼女に気を取られ、いい一発を食らっている。




ウィリィンはなるべく回転がかからないように投げられたものの空中での重心が安定せず、ジタバタしてしまい、パニックに陥っていた。


その間にも高度は下がり、着地地点で構えていたルリィウィンがスッとキャッチする。


しかしその直後、アウィリィの拳が右頬に炸裂し、吹き飛ばされる。


ルリィウィンは吹き飛ばされた身体をうまくねじり、ウィリィンを傷つけないよう地面を蹴って体勢を立て直す。




(いきなりウィリィンを投げるなんて、びっくりするじゃないの)




(そういうお主もキャッチの隙を狙った拳はいい威力だったぞ?


おい、ウィリィン、惚けてないでしゃんとせい。)




(あばばばばば....っハッ!?)




ルリィウィンに声をかけられ、復活する。


先程より激しいやり取りに脳が追いつかない。


アウィリィはかなり自身に気を使って戦ってくれていたらしい。




(ほれ、まだまだいくぞ?)




(クッソ、やりづらいな)




その後もルリィウィンのウィリィンを使った策は続いた。




あえて殴りかかってくるアウィリィに対して、自身を差し出したり、




(ひいいいいぃぃぃぃぃぃ)




アウィリィが鼻先ぐらいで拳を止めてくれたため、顔面を貫通されずに済んだ。




アウィリィの目の前に放り投げ、視界を妨害したり、




(今、払い除けようとしなかった!?妨害してごめんなさいぃぃぃぃぃ)




ウィリィンが出している泥に混じって投げられたため、一緒に払い除けようとして、ハッとした硬直をルリィウィンに攻撃されている。




(し、してない、してないわよ、妨害はしていいから、そういう鍛錬だから)




(ふふふ、言葉で動揺を誘うのも立派な戦術だ。上手いぞ)




(そういう意図はない、意図はないからぁァァァ)




言葉の限り否定する。

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