第11話組手1
そうこうしているうちに肉体が再生され、いつもの赤子の姿に戻るとおしゃぶりを再度口に押し付けられる。
(さて、大丈夫だったかしら?)
(はい、全く苦しくなかったです。
でもやっぱり魂だけの状態になることに対する喪失感みたいなものが後から襲ってきて・・・怖いですね・・・激痛が走るよりは全然ましで、良かったです。
ありがとうございます。)
再生が終わると自身が陥っていた状況について見直すことになり、肉体が無かったことや、直前の自身の異常な行動に対する恐怖が呼び起されていた。
(そういう感じになるのか、難儀なものよのう。
肉体がなくなることに対して喪失感なぞ感じたこともなかったわ)
(そうね、この子を育てていく上ではそういった感じ方の違いについても意識していかなくちゃね・・・)
(で、でもこれぐらいなら、全然慣れればへっちゃらだと思います。頑張ります)
(そう焦らんでもよい。授乳のたびに練習するので、嫌でも慣れる。)
(あ、はい)
食事と死はセットで行われるらしい。
(では、鍛錬を始めよう先行はアウィリィ、お主からで良いな?)
ウィリィンはアウィリィに手渡される。
二人とも歩き始め、一定の距離を取ったところで構え始める。
(はいはい、あんまり最初は飛ばさないようにね)
(おぬしもしっかりと守らんと、うっかりウィリィンの方に攻撃が飛ぶかもしれんぞ?)
(え、え?何が始ま!?)
いきなりルリウィンの姿が一瞬ぶれたかと思うと自分の顔面すれすれに向かって拳が飛んできていた。
アウィリィが自身を持っていない方の腕で、軌道をずらしたみたいだ。
(ひいいいいぃぃぃ!?)
(おい、いきなりウィリィンを狙うな、私が反らしてなかったら当たってたろうが)
(これぐらい、軽く反らせるだろう?おっと、ウィリィンに説明がまだだったな。
今から私とアウィリィが軽く魔法なしで組み手を行う。
お主はそれを見て、感じて実践での立ち回り方を目に焼き付けよ。
ちなみに先ほどのようにお主を狙った攻撃も時たま行うのと、
高速で動き回るのに振り回される分は自身でなんとかせい。
おぬしは魔法を使って、防御、妨害、攻撃、なんでもしてよいぞ。
お主が胎内で行っていたことの延長じゃな)
(ちなみに、胎内の時とは比較にならないぐらい動くわよ。
それに慣れてきたらギアもあげてくからっね)
今度はアウィリィがものすごい勢いでルリウィンに近付き、回し蹴りを放つが彼女は腕をクロスしてそれを防ぐ。
(あばばばばば、風圧がぁぁぁぁぁ、胎内とは比べ物にならないぐらい揺れるぅぅぅぅぅ)
今度はルリウィンが足払いをかけ、アウィリィが後方へと回りながらジャンプする。
(ほら、バリアぐらい使いなさいな、振り回されてるだけじゃいつ攻撃が当たっても知らないわよ?)
アウィリィに言われてハッとし、自身の周りにバリアを展開する。
拳を防ぐのには心もとないが、風圧や、振動を軽減することができた。
(ちなみにだが、アウィリィは片手がウィリィンでふさがっている分ハンデがある。
そこをウィリィン、おぬしに補えとは言わんが、少しばかり余分に拳がすり抜けてくるかもしれぬなぁ?)
(ふん、別にこれぐらい何ともないわよ。
でも、攻撃とか妨害をしてくれるとあいつにあほ面拝ませることができるかもしれないから、お願いできるかしら?)
(あ、は、はい)
取り敢えず魔力を水や、火、土などに変換して放つが、
魔力操作がおぼつかないのと、魔力を放つという行為をしたことがなく、
うまく勢いのある形で飛ばすことができない。
それに彼女たちはこちらのことはお構いなしで組み手を再開しているため、狙いが定まらない。
たまに身体には当たらないものの、バリアを貫通する形で拳が飛んでくるため、気が気でない。
(ほれほれ、そんなちんけな攻撃ではそよ風ほどの影響も感じぬぞ?)
(そりゃ、生後3日の赤ん坊にそれを求めるのはむつかしいでしょうっよ)
そう、自身が最大限練り上げた魔力でも一切彼女を傷つけるには至らない。
かわす必要すらないご様子。
となると攻撃はアウィリィに任せ、妨害に徹するべきだと気づき、魔法の使い方をいやらしくした。
足元に小石をおいたり、小さな穴を作ってみたが、踏み抜かれてしまい、失敗。
砂塵や、水蒸気を作って顔面、特に目を狙って飛ばしてみたが、軽すぎて吹き飛ばされる。
ならばと、土に水を含ませて重たくし、泥の塊にしてウィリィンの方へと連射した。
重たくなったことで行動のついでに吹き飛ばすことが難しくなり、泥に対し手を動かさせることに成功した。
(おお、さすがにこれは少し邪魔だな、いいぞ、魔力とは創造力だ、組み合わせ次第でいくらでも手札となりうる)
アウィリィはウィリィンが妨害している分有利に立ち回りはじめ、攻撃の比重が少し高くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます