第4話初めての朝
翌朝、目を覚ますと、ベビーベッドのようなものに寝かされていた。
ただ天井部分も柵で覆われており、ベビーベッドというより
(檻じゃんこれ、鍵かかってるし)
しばらく経つと彼が起きたことに気づいたメイドが寄ってきて鍵をポケットから出し、解錠した。
柵の扉を開けて抱えあげると、魔力を使って風を起こし、彼の服を剥ぎ取った。
(おおお、魔法ってこんな感じに見えるんだな)
彼の目にはメイドの魔力の流れが身体から放出され、風へと変わり、
指向性を持って自身の服を脱がして行く様子が映し出された。
剥ぎ取った服は洗濯かごに吸い込まれていく。
次に空中に水球を生み出し、彼をその中に突っ込んだ。
(ボゴッ!?あの、呼吸できないんですけどって、水が回転して....どわぁぁぁぁ)
メイドは水流を生み出し、彼を回転させながら、別ベクトルの水流を何個も生み出し、
彼の体を撫でることで体を優しく擦り、キレイにした。
時間にして30秒ほどだろうか、水球から解放された彼は空中に浮かされ、
全方向から温風を浴びせられ、濡れた体が乾いていく。
(水も風も人肌程度の心地よい温度で、水流、風も肌に叩きつける感じではなく、
身体表面を撫でるような汚れ、水気を取ることに特化した繊細な操作、
水球に突っ込んだのも全身を効率よく、同時に洗える...このメイド、手際が良すぎる...
ただ、赤ん坊を水の中に短時間とはいえ突っ込むのはどうかと思いますが)
と、彼が考えているうちに全身が乾き、風によって運ばれた新しい服が着せられ、メイドの腕の中に戻った。
「(はい、キレイになりましたねー)」
メイドが何か喋っている。そしてそのまま彼を他の部屋に連れて行くようだ。
(うん、でっかいお城みたいなとこ)
部屋から廊下に出た彼は周りの風景を見て感想を頭の中で呟く。
まだ廊下と彼がいた部屋しか見てないものの、メイドがいたり、広すぎる廊下と、城や屋敷を彷彿とさせるものが沢山ある。
そうこうしているうちに目的の部屋に着いたのか、メイドは立ち止まって見るからに豪華な扉をノックする
「(入っていいぞー)」
中から声が返って来る、メイドはドアを開けて中に入った。中には絶世の美女が
「(自分のこと刺し殺したお母さま(仮)だ!!!!そういや、俺、なんで生きてるんだ?)」
生まれたばかりに受けたショックが大きすぎて昨日のことを忘れていたが、
元凶を見て、ようやく自身が殺されたことを思い出した。
「(お子さんの体を清めて、お召し物も交換しておきました。
全くグズったりせず、とても良い子でしたよ)」
「(おお、悪いな、水は嫌がらなかったか、)」
彼はメイドから当主に手渡される。彼は最大限の警戒をしつつも、
まだ身体をうまく動かせない彼は魔力を展開し、構える。
「(おお、魔力がゆらゆら揺らして警戒しておるぞ。
よしもう一度ナイフを、何がそんなに嫌だったのか見極めよう)」
「(はい、当主様)」
昨日と同じナイフが彼女に手渡される。彼は昨日の記憶がフラッシュバックし、
滝のように冷や汗を流しながらも作戦を考えていた。
(ただ抵抗するのではなく、明確に嫌なことを伝える....その方法は)
ゆっくりと心臓へと伸びてきたナイフを魔力で覆った両手で掴む。
魔力を電気へと変換し、バチッとさせることでナイフを手放さ...せられなかった。
(くっ、でも少しは驚いただろ、これで刃先を自分の身体から逸らし...ふぬぬぬぬぬぬぬ)
全力で力を加えるが、ナイフはびくともしない、
(ふぬぬぬぬぬぬぬ、温めても、冷やしても、水で滑らせて見てもまったくない動かない....)
そうこうしているうちに抵抗虚しく魔力が無くなってしまい、ナイフを手放してしまった。
満身創痍でグダってしまい、全身を脱力し、諦めることにした。
(無理、お母さまがこちらを微笑ましく見てるだけだし、伝わらない....
メイドも止める様子なし、もういい、好きにしろよぉぁぁ)
彼がもう自暴自棄にグズりながら頭の中でこの後訪れるであろう痛みに対し現実逃避を行っていると頭の中に声が響いた。
(おお、やはり知性がしっかりとあるな、おい私の声が聞こえておるか?)
(!?!?え、なんかお母さまっぽい声で話しかけられてるんだけど、
なんか急に言語能力に覚醒した?
赤ん坊ってこんなにいきなり喋ってる内容が分かるようになるのか?)
(ほう、自身がどのような存在で未来の成長過程について理解しているか。
魔力でお主の魂を結びつけて会話できるようにしたのよ。
赤子の学習能力は目を張るものがあるが流石に生後2日で言語堪能は無理があるだろうて。
我が子よ、話をしようではないか、頭の中で思い浮かべるだけで良い。
まず、このナイフをどうしてほしいのだ?)
(え、なんか、話が通じてるぅ?じゃあ、ナイフで刺さないで欲しいです。
何なら近づけないで欲しいです)
(...いいだろう)
「(すまん、ナイフを片付けてくれんかの、今我が子と対話しておるが、
こいつは面白いことになりそうだ)」
彼女がメイドに話しかけるとナイフを受け取り、何処かにしまい込んだ。
(さて、これで良いかの、そういえば魔力を使い切って疲れはてておったの、回復してやろう)
優しい魔力が彼を包み込むと、彼を襲っていた疲労感がスッと消え去った。
(あっはい、ありがとうございますぅ)
(では、話を進めよう、お主、既に人格の形成が済んでおるな?
なんなら体得し得ない知識も多く保持しておると見える、どうだ正しいか?)
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