第2話 おっさん、女神を怒らせる
「どのみち拒否権はありませんので、観念してください」
観念っつったかこの女神。
最初におめでとうございます言ってたやつが観念しろ言うのはオカシイだろ。
最初から逃がす気のない詐欺師の手口だぞ。
「ちなみにさっき頂いた要望の他に『異言語理解』、『収納』、『鑑定』スキルが付きます。
あと魔法は努力次第で誰でもどの属性も習得できる世界なのでお付けしませんが、『生活魔法(
行動によって生えてくるスキルもありますよ。
至れり尽くせりだな。異世界物を予習したというのは伊達ではないらしい。
「ん?鑑定があるが、逆に俺が鑑定される可能性もあるのか?可能なら『偽装』できるとありがたいんだが」
「・・・付けておきます」
おぉ、言ってみるもんだな。
「そういえば転移先はどんなところなんだ?治安や魔物の強さやダンジョンの有無は?魔王討伐の使命とかあるのか?
職業『IT技術者』で生存可能なのか?」
今更だが結構重要なことを聞いていなかった。
「いわゆるナーロッパですが、治安はそこそこです。街の外や路地裏に近づかなければ大丈夫でしょう。
そもそも分身ならいくら死んでも大丈夫でしょう。
魔王はいませんし、使命も特にないので好きなように生きてもらって大丈夫です。
ダンジョンはあります。
職業は・・・
ナーロッパとか言うなよ、女神が。
分身だろうが死にたくはないんだよ。痛いし苦しいだろうが。
あとやっぱり『IT技術者』、戦闘職じゃないのね。ですよね。
しかし、たしかに分身だからそこまで慎重になる必要もないか。
「何かしらの攻撃手段や防御手段も欲しいんだが」
と、
「そのへんは1から冒険者でもやって成長するのを楽しんでください。
駄目だった。
そんなトライ&エラーは嫌だ。
まあ、異世界での成長の楽しみみたいなのはあったほうがいいか。モチベーション維持のためにも。
「回復とか生産系スキルなんかも欲しいんだが」
再び
「先ほど言った通り、1から習得してください」
駄目か。なんか急に渋くなった気がするが、
行くと決まってからめんどくさくなってない?
「そんな事ありません。今つけているスキルだけでもだいぶ破格だと思います。
しょうがないので成長速度2倍もお付けします。
これが最後ですからね」
だから心を読むな。だいぶ馴れ馴れしくなってきたな、この女神。
いや、どっちかって言うと俺の態度のほうがおかしいか、仮にも神に対して。
しかしゴネてみるもんだな。ゴネ得、ゴネ得っ・・・!
「そうです、あなたの態度がおかしいんです、最初から。
そんなフランクな感じで来られたら接し方もそれなりになります。
仮にもではなくちゃんと女神なんですよ、本物の!
あと、地下チンチロまでは履修してませんので理解不能です」
履修してないならなんでそんなツッコミができるんだよ。
もう威厳とか跡形もないな。
最初は厳かな話し方してたように思うが。いやそれも割と早い段階で剥がれてたな、ノーブラのくだりのあたりか。
俺の思考を読んで思い出したのかまた少し頬を染めて、今度は左手で両胸の先端を隠すように覆いまた睨んでくる。やっぱ隠したかったのか、もう威厳もなにもないしな。
・・・可愛いかも。
あ、そんなに強く隠したら変形して・・・
叡智だ。
「・・・っ!」
今度は耳まで赤くして鋭く睨んでくる。
・・・だからそれ可愛いんだって。
またさらに顔を赤くした。
ん?急に目が座った様な・・・
「不敬です」
ヤバい!からかい過ぎたか。
「与えたスキルは全て剥奪・・・「悪かった、待ってくれこの通りだ」」
dgz。
この3文字のような体勢を取る。
そう、土下座である。
日本文化を履修してるなら通じるはず!
スキルを剥奪されるわけにはいかない。そもそも拒否できない上に帰還ができなくなるのはマジにまずい。
俺は誠心誠意本気で心から謝った。
「誠心誠意と言うなら用意しましょうか?鉄板・・・」
「まじで許して!その発想、ほんとに女神!?」
血焦がし骨焼くのは嫌だ。いつまでそのシリーズ引っ張るんだ。
「仕方ありませんね。女神が一度与えると言った物を簡単に覆すわけにもいきませんので」
ほっ。よかった。この女神だいぶチョr
「それ以上考えるのはやめましょうか」
今日一怖かった。あと今日一美人だった。
「はい、誠に申し訳ありませんでした」
・・・思考ダダ漏れはヤバい。無心だ無心。素数を数えろ。えーっとえーっと1って素数だっけ?素数ってなんだ?
「まったく、誰のせいですか。1は素数ではありません。そもそも最初からキレイなエロいねーちゃんとか、可愛いとか美人とか(ぶつぶつ)」
後半何やら聞こえづらかったが、どうやら俺は難聴系主人公ではないらしい。バッチリ聞こえてしまった。あれで絆されて優遇してくれたかんじか。
なんだかんだ成長速度2倍もくれたしな。惚れそうだぜ。
そこまで考えたところでやらかしたことに気づいた。
女神の方を見るとモジモジしながらこちらをチラチラ伺っている。
「ふっ、不敬です。ペナルティとして報告義務を課します。
『転移』スキルを付けますのでそれでここまで来てください。
もともと帰還用に与えるつもりだったスキルですが、行ったことがある場所に転移可能ですからここにも来れます」
頬を染めながらそんなことを言うんだよ、この女神。
てかまたスキル増えた。チート級なのが。
「りょ、両世界を行き来できるようにした例がないので、これは必要なことなんです!
まっ、毎週、来てくださいね」
最後だけそんなお願いするように上目遣いで言いやがる。
女神の美貌でそれやったら反則だろ。
てかペナルティなら命令でいいのに。
「もう、また美貌とか。毎日にしてもいいんですよ」
「毎週でお願いします。
でも神域にヒョイヒョイ人間が来てもいいもんなのか?」
ふと疑問に思ったことを聞いてみる。
「はい、後付けに聞こえたかもしれませんが、あなたの状況は割と把握しておく重要性が高いです。
あとこのスキル構成だと何百年か何千年先になるかわかりませんがいずれ亜神に片足突っ込むくらいには成長しそうなので、さして問題にはならないでしょう。
あっ、あとここは一応私の私室ですし、他の人(神や女神)から干渉されません」
「そっ、そうか」
亜神!?
またなんかで聞き捨てならんワードがてきたがそろそろキャパオーバーだ。聞かなかったことにする。まあ先の話だろ。
あと最後、モジモジしながら言うな。
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