第1話 おっさん、異世界転生に抗う
気づけば真っ白い世界にいた。
そして目の前には身体に白い布巻いただけみてーな、エロくてキレイなねーちゃんがいた。
「・・・・えっと、あなたは?」
「女神です。これはただの布ではなく神衣です」
やべ、やっぱ心読まれんのか。確かにか神様系が着てそーなイメージの服だが、豊かな胸部が強調されていておそらくノーブラなのか先端が・・・エロい。
女神を自称するねーちゃんはハッと自身の胸部を確認するがそれも一瞬で、特に隠すようなことはせず堂々とした姿勢は崩さない。
こちらを睨むその顔は若干頬が赤い気もするが。
まあその服でブラつけてたら横から見えるもんな。
ヌーブラとか使う手はありそうだがブラつける概念とかなさそうだしな、勝手なイメージだが。
この話題はまずい。別の質問をしよう。
「・・・・ここは?」
「神域です」
「・・・・」
いや、俺だって通勤時や寝る前に異世界物の小説や漫画を読むしそこそこ知識はあるつもりだが、実際来るとどう対応すりゃいいかわからん。
というか自分の正気を疑う。
「おめでとうございます。異世界転生に当選され「それはさっき聞いたが」」
女神を自称するねーちゃんが同じことを繰り返すので遮ってしまった。タメ口で。
「いえ、反応がありませんでしたので」
女神を自称するねーちゃん(もう女神でいいか)が気を悪くしたふうもなく答える。
こんな夢まで見るってことはやっぱ疲れてんのか、異世界物読み過ぎたか?
「夢ではありません」
こんな意識がはっきりした夢なんか見たことねぇが確実に夢を否定できる材料ってそういえばねぇよな。
ほっぺつねって痛いからって夢じゃないとは言えないよな。
「現状を夢ではないと認識させる
まあ、夢でも失うものはないと考えて聞いて下さい。
ですが本当に現実ですので、夢だと思っているなりに真面目に考えることをおすすめします」
真面目に異世界転生を信じた挙げ句、夢でしたじゃ、起きたときに死にたくなるだろ。月曜の朝だぞ。
まあ、夢だと割り切っときゃダメージ少ないか。
「そのスタンスで構いません」
そもそもこういうのって独身童貞のブラック企業の社畜に話が行くもんじゃねぇのか。
「厳選なる抽選の結果です」
そもそも応募してないんですがねぇ。
「ってか、普通に心読んでくるんですね!?」
「はい、テンプレですので。長いノリツッコミでしたね」
スルーしてた心を読まれることにツッコミをいれると女神はそんなことを
テンプレとか口にしちゃダメだろ。あとノリツッコミ知ってんのかよ。
「はい、今回の件を担当するにあたって、異世界物の流行りは押さえています。あと日本文化も最低限は」
女神の読心は止まらない。
担当?転生させる業務とかあんのか・・・
ノリツッコミは最低限の日本文化に入ってるんですね・・・
いい加減話が進まないんで真面目に答えることにする。
「拒否で「拒否権はありません」」
向こうも真面目なテンションで有無を言わさぬ雰囲気で食い気味に拒否ってきた。
だが、引き下がるわけにはいかない。
「いや、妻と子ども達を残して異世界なんかに行くわけにはいかない」
「では、帰還可能なオプションをつけましょう。週末は戻ってこれますよ。祝日と年末年始も大丈夫です。
転生から転移に変更ですね」
は?
オプション・・・
なに?そんなに融通利くもんなの?
「それでも家族を養わないといけないし会社を辞めるわけにはいかない。担当しているプロジェクトもこれから忙しくなるんだ」
「では『分身』スキルをお付けいたします。その代わり本体か分身のどちらかは異世界の方に常駐願います」
常駐て・・・
なんかそういう単語使われると急に業務っぽくなるからやめてほしいんだが。
「いや、『分身』がどんなスキルかはなんとなく想像できるが現代日本の仕事も異世界生活もとか、体も頭も持たん。45歳はいろいろガタがきているし、物忘れとかひどいんだぞ?老いをなめんな!」
一人で2馬力働けとかブラック企業も顔負けな女神である。
「では『不老』、『健康』、『並列思考』のスキルもおつけします」
なんかとんでもなさそうなスキルが飛び出したぞ。
ポンとお付けして大丈夫なスキルなんか?
「いや、『健康』とかはイメージ通りのスキルならありがたいが、『不老』とか大丈夫か?ずっと見た目変わらんかったら地球じゃ人外認定されるぞ。50年、100年もすればびっくり人間じゃきかねぇだろ」
「では、『変幻自在』スキルもおつけします。誕生日の度に〇〇歳の自分に変身してください。変身の時間制限は設けないので生活で不便は感じないと思いますよ。
ちなみに『不老』と『健康』により肉体は20代前半の全盛期が維持され、怪我や欠損は再生されます。
なので、人前で死にかける様な怪我を負うと健康を維持しようとして再生が始まってしまい気持ち悪がられるので気をつけて下さい」
『健康』スキル思ったよりぶっ壊れだった。もうほぼ不死だろ。完全に人外じゃねぇか・・・
「いえ、頭を潰されたり、心臓を抜き取られたりすれば死にます。
「気」で完全に消滅させられたりしても当然死にます」
どこの魔人だよ・・・
問題を解決してあげているつもりだからか女神の表情から漂う若干のドヤがムカつく。
「はぁ、それにしたってずっと死ななきゃオカシイだろうが。まだ地球じゃ不老も不死も実現していないんだよ。
あと、『では〇〇お付けします』の流れやめろ」
ため息まじりにツッコむと
「はぁ、じゃあもうそのへんは自分で解決してください。
あなたの現職を活かせるように『IT技術者』を職業にしておきました。
レベルを上げていけば国のデータベース位簡単にハッキングできると思うので戸籍ぐらい自分で用意してください」
え、この女神ため息ついた?
たしかにお付けしますやめろは言ったが急に投げやりになったぞ。
まあ、それならなんとかなるか?
いや、逃げ道どんどん塞がれてるぞ、待て待て待て!
「じゃあ、転移の手続き進めちゃいますねー」
俺の思考を読んで何とかなりそうと思ったのか女神はそんなことを言いだした。
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