Day28 ヘッドフォン

 早く寄越せと騒ぐので、まあ捨てるものだからいいかと三人が持てそうな小さいものを箱からつまむ。手渡そうと近づけたら「ギャー」と叫んで窓枠から落ちた。慌てて外を見ると、勢いよく飛び起きて抗議してきた。

「やいっ、なんとするっ」

「そんなもの近づけるなっ」

「不調法ものめっ」

 元気でホッとした。草のお面がちょっとずれてるものいるけど、それ以外はなんともなさそう。でも持てないならどうするんだと思ったら俺に運べと言い出した。やっぱりというかなんというか。

「我らについてこい」

「主様に会えるのだ。ありがたく思え」

「粗相するなよ」

 結局付き合ってしまい三人の後ろを歩いてる。きいきい喚き続けられて負けた。窓を閉めて無視しちゃえばいいんだろうけど、そこまでできない。あーあ。押しに弱すぎる俺が問題なんだよなぁ。

「よし」と声が聞こえて、ぱちりと景色が変わった。木が生い茂ってるただ中で、静寂からいきなりワーンと響くセミ時雨に打たれる。思わず耳をふさぐ。音でクラっとするってあるんだ。ノイズキャンセルつきのヘッドホンがほしい。そしたらきっと、なんかよくわかんない奴の声も聞こえないだろう。少し収まって片目を開けたら、三人が足元で腕をふりまわして飛んだり跳ねたりしてるのが見えた。存在自体うるさいなら、耳ふさいでも無駄かもしれない。

 うるさく急かされて歩き出す。あまり近いと潰しそうで怖い。しばらく歩いたら少し開けたとこが見え、そこへ向かって三人が走り出した。

「主様、もう大丈夫ですぞ」

「持ち帰りましたゆえ」

「ささっ、お召し上がりを」

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