Day27 鉱物
やっこさんは大丈夫って言ったけど怖くて、スマホで動物の動画を見続けた。外が明るくなり始めたころに雨がやんで、それで少しホッとできた。疲れた。ちょっと眠ろうとしたけど、眠れない。気が立ってるというか。仕方なく起きて、台所でコーヒーを飲んだ。カーテンの隙間から何もいないのを確認して開ける。朝焼けがどうしようもなく綺麗で、やっと夜が明けたのだと思えた。
何しようかとテーブルに置きっぱなしにしてた本を取る。殺人事件のミステリを読む気になれない。居間にある他の本もいまいち。婆ちゃんの部屋も探したけど、エッセイとか料理本とかで食指が動かない。なので、最初に見回っていらい入ってない爺さんの書斎へ行った。並んでる本棚にみっしり入った本は見るからに古くて、床の積み本はほこりをだらけ。部屋の窓を開け、本を見るついでだしと思ってほこり取りを持ってきた。積み本は窓の外で埃を落とし、棚に並んだ箱はほこりを拭いてから中身を覗く。形のはっきりしない素焼きの人形みたいのは怖い。次の箱はなんかの鉱物がゴロゴロと。その次――
そ……く……
小さい声が聞こえて、飛び上がった。
……れを……
反射的に窓を見る。
そ……くれ
窓枠に小さい、人? が三人。
「それをくれ」
見つけたとたんはっきり聞こえた。着物っぽいものを着てちまちま動いてる。人形劇みたい。三人一緒にきいきい喋りだした彼らに驚いたけど、昨夜みたいに嫌な感じはしなかった。なんともない。やっこさんも出てこない。
「それ」ってどれだと思って最初の箱から順番に開けてくと、鉱物の箱で「それ」という叫びが三人分重なった。
「それをくれ。主に必要なのだ。礼はするぞ」
「今すぐくれ。主が礼をする」
「早くくれ。礼はあとだ」
三人はいっぺんに喋る。礼ってあれか? もう頼み事するなっていう願いを叶えるだけのやつか?
前のむかつきを思い出してしまった。なんかすごいもの注文したらどうすんだろ。宝くじが当たるとか、俺が有能になるとか。……むなしい。カニの話でさえわかんないことあるのに、早くくれとか要求だけ大きい三人がまともな礼をするとは思えない。マッチポンプだけど、もう頼み事するなっていうほうが一番マシな気がする。
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