Day24 朝凪

 そんなこと考えてたら、どんな仕事してるかなんて探るようなことがポロリと出てしまった。端から後悔するのに口から出てしまったものはどうにもできない。

「なんもしてないなぁ」

 男ののん気な声。なんでもないみたいに言われると、自分は貶めるふうに考えてたんだと気づく。本当に嫌になるな。

「ブラブラしとるよ。ここきたり、あんたんち行ったり、海を見たり」

「海って岬のとこ? 友達がさー、なんかおっかないのくるって言ってたんだ」

「ぼーと眺めとるだけよ。なんも怖いことない。朝凪の海をな、陽が高くなるまでぼーっとな」

 穏やかな笑みを浮かべる横顔は、自分からすごく遠いところにある気がした。親しみを感じてたのが恥ずかしい。汗をかいているグラスに視線を戻す。ぷちぷちと昇っては消える炭酸の刺激を口に含んで飲み込んだ。

「行くか?」

 え?

「行く行くー。お弁当持ってみんなで行こうよ。マスターも一緒にさー」

「私は遠慮します」

「付き合い悪いなーもう。じゃあ三人でいこう! 友達も紹介するよ。そしたらおっかなくないってわかるもんね」

 あっという間に3人で出かけることになってる。動揺して男とカニを交互に見たら、カニはマスターにお弁当ねだってるし、男はいつもと変わらずソーダ水をさっさと飲み切って笑ってた。

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