Day20 摩天楼

 ゴミ袋に入れてくだけの玄関掃除は昼前に終わり、掃除機と拭き掃除もできた。明るくなった玄関を見渡すと顔が緩む。うん、なかなかスッキリしたんじゃねぇの。

 タオルで汗をぬぐって、お昼にすることにした。冷凍食パンにスライスチーズを乗せ、焼いてる間にトマトを切る。氷を入れたコップに水道水を注いで一気に飲むと、汗がジワリと額に浮かんだ。

 お昼ご飯のあとは、マスクをしてから閉め切っていた部屋に入って窓を開けた。扇風機を回せば、埃っぽい空気が窓を抜けて入れ替わってく。こまめに空気の入れ替えしたほうがいいと思うけど、田舎の広い二階建は一、二階とも部屋が多くて気遅れして手が動かない。片付けの道のりは長い。ここもどこから手をつけよう。婆ちゃんの部屋だったっぽいらしくて色んなものがある。積み重なったプラの衣装ケース、タンスが3つ、腰の高さの大きな棚、その上にはレコードプレーヤー。みんなのうたかなんかのレコード聴かせてもらったっけ。ぱんぱんに詰まってるレコードに指をかけて出してみた。レトロなジャケットに『摩天楼』の文字。『みずいろの雨』ってものまねで見た気がする。あ、ビートルズ。タイトルがカタカナなんだよなぁ。こんなに色んな種類あったんだ。

 またレコードを聴いてみたくなってコンセントを入れた。袋から出したレコードは真っ黒でツヤツヤで触っちゃダメな感じがする。真ん中の穴を支えにはめてスイッチを入れ、生きてるみたいにクルクル回る黒に針を落とした。

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