　朝早く目が覚めて、少しは片付けないとという気分になった。まだ暑くないうちに水やりをするのは清々しい。冷凍してたパンとアイスコーヒーで朝ご飯をすませてから、手をつけてない玄関にゴミ袋を持っていく。玄関ドアを開けて、飾ってあったデカい石をストッパーにした。風が細くふいて家の中に朝の空気が入ってくる。気負いもなく下駄箱の引き戸を開いて、靴を次々とゴミ袋に入れた。綺麗な靴なら売ったほうがいいかなって考えるから面倒で動けないんだ。ぜんぶ捨てるって決めたら捨てるだけでいいから楽になる。経年劣化で崩壊した靴底を集めながら頷いた。

「ほぅい」

　玄関に近所の婆さんが現れた。なんだなんだと思ったら、大き目のビニール袋を渡された。中にはスイカ、その上にむくむくしたトマトが5個。畑で採れたもののおすそわけらしい。俺より一万倍コミュ力高い婆さんは方言で半分聞き取れないてきとうな相づちをものともせず話をする。俺もつられて家の片付けしてるっていうのと、お返しに欲しいものあれば持ってってと話した。婆さんは笑って手を振り、結局何も取らずにぽてぽて帰っていった。

　手にはずしりとするタイミングの良すぎるスイカ。これ、俺一人で食べるのはキツイ。デカいトマトも。とりあえず冷蔵庫に入れて、トマトは昼に食べよう。