Day17 半年

 なぜこの男が爺さんを知ってるのか疑問がいくつも浮かぶ。いっぺんに口から出そうになって喉がつまり、とりあえず俺が孫だっていうことといつ会ったのかを聞いた。

「孫か。知らんかった。最後に会ったのは、はて、半年、いや一年? もっとか? 五年くらいか?」

 男は首を左右に捻って、まったく意味のわからないことを言う。爺さんが死んだのは俺が小学校に入るか入らないかくらいなはず。二十五年ほど前に死んだと言えば、初めて聞いたみたいなとぼけた顔をした。

「そうか。ちっとばかり寝てたからなぁ」

 どういう理屈だ。いや、まて、俺とあまり変わらないように見えるのに爺さんと知り合い? あ、でも、子供のときに会ってる可能性もあるのか。だいぶ爺さんだったはずだけど、今の俺と似てるってなんだよ。

 唐突に「帰るか」と男が立ち上がった。カニは魚肉ソーセージを食べながら「じゃーねー」とハサミを振る。さっさと外に出てしまった男をに焦りながら、店主にいくらになるか聞いた。

「お代はその男からいただいてます」

 にべもなくそう告げられる。いつとかなぜとか聞ける感じでもなくて、頭を下げて店を出た。待っていた男に返すため金額を聞けば、「いらん」と返される。こっちもなんでかばっさり切られた気がして、納得いかないままごちそうさまとだけ言った。思えば、男はいつもいきなりだ。だいぶ振り回されてる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る