Day16 窓越しの
「僕のギョニソーも美味しいよ。食べる?」
カニが勧めてくれたけど、米粒よりちょっと大きいくらいのギョニソーは遠慮する。ゆっくり食べな。
「そーお? で、カニ釣りでスルメをさー」
続くカニのお喋り。ぼんやりした白昼夢から抜け出そうと、外を見る。窓越しの日差しは明るくて道が白飛びしてる。草むらの影は濃くて夏みたいだ。夏だけど。視界の端にヒラヒラした白いものがあり、やっこさんもいるんだと思った。顔を戻せばカニと錬金術師。そういえば、噂で聞いたとか言ってたっけ。よそ者がきたとかそういうの?
どんな噂か気になって、カニの話が終わったら聞いてみようとチャンスを待つ。
「では、私はこれで」
錬金術師が立ち上がった。いきなりで気持ちの準備がないまま、「うわさっ」と叫んだ。丸いサングラスが俺を見る。慌てすぎたのが恥ずかしくて、どんな噂なのかあわあわしつつ聞いた。
「知ってる方に聞いてください」
錬金術師は庭で話しかけてきたときとまったく違う塩対応で、さっさと店を出てしまった。塩過ぎて引き留められもしない。
男は知ってるのかと隣に座る顔をうかがうと、男もこっちを見て笑った。
「犬笹んとこの清三が帰ってきたって聞いたなぁ」
犬笹清三って、死んだ爺さん? 今住んでる家の。俺が子供のとき死んだからほとんど知らないけど。
「わしは死んだの知っとったけどなぁ、知らんやつが騒いどったよ。あんた良く似てるわ」
え、爺さんの知り合い? え、年違いすぎない?
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