Day12 チョコミント
怖い。サングラスの向こうの見えない目が。常識みたいなののタガがないように思えて嫌な緊張感がある。
「ああ、まだお疑いで。私がソレをどれほど必要としているのかお見せしたほうがいいかもしれません」
すごく良いことを思いついたってふうに、首にかけてる革ひもを手繰って胸元からガラス瓶を取り出した。それを大事そうに撫でてから俺に差し出す。
「さあさあどうぞ」
ずいずいと押してくる勢いに負け、錬金術師だって名乗るあやしい男から瓶を受け取った。期待に満ちた目で見られて居心地悪い。体を寄せて覗き込んでくる錬金術師が影になってるから、持ち上げて陽に透かしてみる。中には透明な薄みどりの液体がとろりとしていて、そこに漂う焦げ茶色っぽい小さいつぶつぶ。細かい何かが角度によって光をはじくキラキラしたチョコミントの配色で、いったいなんなのかまったくわからない。
「ホムンクルスです」
え?
「核はできたのですが育たないんですよ。理論的には合っているので、培養液の問題かと思いまして。栄養素は揃っているので、起動するエネルギーが必要なのかと思い至り力強い素材を、あ、もうよろしいんですか」
お喋りをさえぎって瓶をつき返した。ホムンクルスって生き物作るってやつだろ。嘘だと思っていいはずなのに思えなくて気持ち悪い。なんだよこれ。錬金術師はまったく気にせずに、紐を首にかけて瓶を大事そうに胸元へしまう。それがまたゾッとする気持ちにさせて、瓶の感触が残る指をぎゅむぎゅむ動かした。
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