Day3 飛ぶ
男が何を言ったのか理解するのに時間がかかった。これは誰なのかと思う。近所の人だった? 何度か声をかけられたけど年寄りだったはずと
「こないだ言っとったとこよ。店主が洒落モンの」
普通に友達と話すような、当たり前みたいな軽い声で思考が途切れた。大きな口でにこやかに笑う男が目いっぱいに映る。あぁ、そうだったかもしれない。そう、そういえば美味しいのだと楽しそうに。なんで忘れてたんだろ。酒を飲まないようにしてから記憶が飛ぶこともなくなってたんだけど。おかしいな。おかしいといえばさっきの声。なんなんだ? 葉の下のほんの少しの陰になんか
「暑いからなぁ。暑けりゃ水もほしくなるわ。なぁ?」
あぁ、そうか、そうだな。暑いから。水がほしくなってもおかしくない。
「さぁ、行こうか。水やりはもういいだろうさ」
そうか、行くか。外水道の蛇口を締める。地面にあったビール缶にぶつけないようホースを置いた。振り向けば、こっちを見ていた男がニィと笑った。目が合った、前髪に隠れてるけどたぶん。背を向けて歩き出した男の草履が土と擦れる音がする。濡れた手をズボンで拭きながらその音についていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます