2025年1月5日 またガリガリくん食べようね
新年もすぎて、2025年になった。
今日が正月休み最終日。今日はみおのご家族とご飯を食べる。
「この服どうかな?変じゃないかな?」
「なんでも大丈夫だよ。お父さんなんて多分スーツとかじゃないと思うし、。」
「いやでも、、どうかな、。」
「似合ってるよ!大丈夫。今日も格好いよ」
「ありがとう」
朝からそんなことを言いながら、12時の待ち合わせに間に合うように準備をする。
「そうだ、この前買ったお土産包んで置いてくれる?」
「わかったよ」
あまり手先が器用な方ではないが、お土産を包装紙に包む。
案の定少しグチャっとしてしまった。
「みおー。ごめん、、」
「まぁ、、気持ち伝わるよ」
「大丈夫かな?」
「うん、大丈夫だよ。」
まだ会う前から心臓がバクバクしている。
人生初の彼女のお父さんに会う瞬間だ。
「私準備できた!」
「じゃあ、いこっか。」
扉を開けると、冬の寒さがはなにツンとくる。
冬の匂いは好きな方だが、年々寒さに敏感になっている気がする。
駅までの道は正月ムードがまだ漂っている。
電車の中はいつもより空いていて、心なしかみんな幸せそうな顔をしている。
目的地は銀座。あと30分は緊張をほぐす時間がある。
(みおには悪いが、少し目を瞑ろう。)
家へ続く道。横にはコンビニの袋を持った女性。
夜道で顔は暗くて見えない。その女性が話かける。
「ねえ、溶けちゃうから食べながら帰ってもいい?」
「うん。そうしよっか。久々に食べるなガリガリ君」
口が勝手に動く。
「なんかこうやって二人で深夜にコンビニ行ってアイス買って一緒に帰ってるとさ、」
「帰ってると?」
「本当に夫婦になったんだなって思うんだよね。こんな時間なのにバイバイもしないし、一緒に帰れる。明日の朝も一緒。」
「ありがとね。プロポーズしてくれて。」
「こちらこそありがと。でも僕で良かったのかな。」
「それ次言ったら怒るから。」
「ごめん、。でも、なんでも買っていいよって言えなくて、情けなくなって。」
「そんなこと気にしてるの?」
彼女がまた笑いかけてくれている
「私はこういう時に、ガリガリ君を奢ってくれる旦那さん好きだけどな。」
「えっなんで。」
「だって、これならほら、歩きながら食べられるし。それに」
「それに?」
「あーん」
おもむろにガリガリくんを口まで持ってくる。
「ほらね。帰り道で翔くんに食べさせてあげられる。」
顔が熱くなるのがわかった。
「照れてるな。可愛いなー翔くんは」
「なんだよ。見ないでよ、」
また笑いかけてくれているのだろうか。彼女はしたから僕を見上げるように見ている。
「いつか出世して、金持ちになって、ハーゲンダッツ奢るから。」
「えー、お金持ちならもっとすごいやつ食べようよ。」
「えっ、ハーゲンダッツが一番高いでしょ。」
「全く、翔くんは、、。まあでも私はこのままがいいかな。」
「なんで?」
「私は、こうやって他愛もない会話をしながら翔くんと一緒にいるのが幸せだから。」
「ありがとう。〇〇。俺本当に幸せだ。」
「やったぁ。私も一緒の気持ち。またガリガリくん食べようね。明日」
「明日??」
翔さん、翔さん。
肩が揺らされる。
「起きて翔さん。ついたよ」
「あっごめん、本当に寝てた。」
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。行こうか。」
「うん。」
最近よく思い出す。誰かの記憶。
「何かあったの翔さん?」
「いや、何もないよ。お父さんと話しすること考えてたら寝てて。」
「まったくもー、翔さんは」
「すまん、」
「お父さん達もう着いてるって、さっきLINE来てたから急ごうっ」
「まじか、まだ20分前だよ、。でも急ごう」
会話を弾ませている場合ではない。彼女のお父さんとお母さんと初対面に遅刻はまずい。
足早にお店に向かった。
その日食事会で何を話したかあんまり記憶がない。
とにかく日本酒を飲み続けて、お父さんはどうやら俺を気に入ってくれたらしい。
お母さんにも好印象だったとのこと。
お父さんもお母さんもみおと同じでマイペースで、でも芯があって。とても優しい人たちだった。
「今日はありがとね。大丈夫?気持ち悪くない?」
「大丈夫、、、。多分、、。」
「無理して飲むから、でも本当にありがと」
「うん、、。先お風呂入りな、、。」
「わかった、何かあったら言ってね。」
みおがいなくなった途端に瞼が重くなる。風呂に入らないと。
でももう限界だ。寝よう。明日怒られるかもしれないが。
起きたのは深夜の3時。ソファで寝ていたから首が痛い。
みおがソファの下で寝ていた。
「ごめんね、心配かけて、でもこんなとこで寝てから風邪ひくよ。」
「うーーーん。うん。寝る」
寝ぼけているみお。
「ベットまで運ぶよ。」
みおをお姫様だっこでベットまで運んで下す。
「シャワー浴びてくるから寝てなね。ありがとう。おやすみ」
シャワーを浴びてベットに入ると、みおが寝言をいう。
「ミコト。勇気を出していってよかったよ。選んでくれた。」
ミコト。聞いたことがある。選択?
いきなり脳裏に思い出す夢。
(まさか、あいつが、みおと。まあそんなことあるわけないか。友達だろ。明日にでも聞いてみよう)
とにかくまだ眠くて深くは考えなかった。そしてこのことを聞くことはなかった。
なぜならこれを思い出すのは部下の結婚式の夜にもう一度彼女と会った時だったから。
16万回目の選択肢 夢実 @sybonder
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