2024年5月25日 ー多分幸せって何気ないー
「お待たせ」
「おう、大丈夫だった?」
「うん荷物はばっちりです!全部準備できた。」
「オッケー、じゃあ乗って。」
あの日からはや3ヶ月。みおと俺は付き合った。
今日は1泊二日の温泉旅行。付き合った記念日というのは中々いいものだと、感じる。5月25日の朝。
「まずは、ここでお昼を食べてその後、この美術館に行って、それから旅館に」
「ちょっとまったー」
そう言って旅行プランを話す声が遮られる。
「翔さん、今日は仕事じゃないんだから、そんなねんみつに練らなくていいよ、もっと気ままに楽しもうよ!」
彼女は意外とその場のノリとやらが好きらしい。
「それに私ね、翔さんと2日間も入れるだけで嬉しいから、もっとお話しとかしたいし……」
可愛いやつめ。ここでその攻撃は困る。
「そうか、わかったよ、でもランチだけはここにしないか?」
「うん!わかった!」
あー可愛い。昨日悩みに悩んで作った計画はのことは、忘れよう。すまない昨日の俺。
「それと、ねんみつじゃなくて、綿密な。」
そういうと、彼女の顔は赤くなった。白い肌だからこそよりわかりやすい。
もう彼女が可愛すぎる。
「…………しゅっぱーつ!」
何もなかったかのように言う彼女もまた愛おしいと思った。
車で2時間半の道のりを、いろんなことを話しながら進む。
「翔さんって、意外とモテるから心配になるんだよね。」
「何それ、聴いたこともないし、てか告白されるとか人生でないよ。それに俺のこと好きって聴いたこともないし。」
「それは、翔さんが知らないだけ、てか興味ないでしょ。」
「うーんそうかな?俺だって彼女欲しいと思ってたよ。」
「早速、浮気ですか?」
むーっとした顔でこっちを見るみお。
「いやいや、文脈的に言っただけで、そんな、今はありがとうしかないです。」
何を言ってるんだ俺は、、。
あはは、と言いながら、笑う彼女。
「私、翔さんのその困ってるようなとき好きなんだよね。可愛いと思う。」
「あんまり、運転中にからかわないでください。」
車の窓を開けると、暖かい風が流れ込む。みおの髪が少しなびく。
この距離感は心地のいいものだと感じる。心が安らぐ。これが運命というやつなのだろう。
ランチはどうしてもイタリアンが良かった。
みおとイタリアンを食べていると、それが日常であると確認できるから。
「美味しかったー、そしたら旅館に行こうか?」
「ちょっとまってね。さっき少し調べて、ここに行きたいんだけどだめかな?」
「いいけど、、そこ神社?」
なんでもない、日本のどこかにある神社である。
「うん、ここに寄りたいの、少しだけ、ねっお願い。」
「わかったよ、旅館の方だしちょうどいいね」
「ありがとうー」
特別に大きく、特別にすごい神社ではないのだろ。でも彼女が行きたいならどこへでも連れて行く。
「なんかあるのそこに?」
社内で外を見ているみおに話しかける。
「うーん。少しだけね。」
「何があるの?」
「私この辺に家族と来たことがあるの」
「そうなんだ。その時によったの?」
「そう。それであそこでみーさんに出会ったんだー。」
みーさんはみおの猫のことだ。
「その神社のそばの旅館で泊まってて、たまたま朝散歩してたらそこにみーさんがいたの。」
みーさんは俗にいう捨て猫というやつなのだろう。
「みーさんの近況報告と感謝したくて。」
「そっか、なら飛ばして行きますか、お嬢様。」
「はい、お願いざます」
そんな寸劇をして笑い合いって、20分。
「ついたよ。」
やっぱり、特別な神社ではなさそうだ。
「ありがと、うわー何も変わってない」
お世辞にも多くの人が来るような場所ではなさそうだ。
鳥居から境内までは、そこまで長くない。
「ねえ翔さん。人って1日に3万5千回も選択してるんだって。」
どこかで聴いたことのあるセリフだ。
「そうなんだ。」
「そんないっぱい選択肢を選んでる中で、翔さんと結ばれたことに感謝しないと」
「いやいやそんな大層なことか、?」
「全く翔さんは、翔さんの年齢を考えたら、ざっくり何億回と選択してるんだよ?その結果私を選んでくれたんだよ。すごいよね。ありがとう」
そういうと境内につく。手を合わせる彼女。
慌てて、自分の手を重ねる。目を開けると、隣にではまだ手を合わせている彼女。
「お願いはできたか?」
「いや、お願いじゃなくて、感謝だよ。」
「そっか。」
「そうだよ、お祈りは感謝するんだよ。お願いばっかりだなんて翔さんらしいけど」
笑った彼女。
「なんだとー」
また寸劇を始める。彼女との空気感はとても心地がいい。
ありがとう神様。
お待ちしておりました。
吉村 翔様、池田 美桜様。
無事に旅館につき、みおと部屋に入る。
夕食は豪華な山の幸を食べる。
温泉に入って二人で晩酌をする。本当に幸せな時間だ。
そうこうしていると夜の12時に楽しい時間はあっという間だ。
二人でひかれた布団に横になり真っ暗な部屋の中。突然みおが聞いてきた。
「そうだ、あの時聴きたかったんだけど、」
「うん?なに?」
「なんで泣いてたの?」
「自分でも思い出せないんだ。」
「そっか、」
「うん、でも悲しかったんだよ。本当に。」
「大丈夫?」
「大丈夫。多分なにか思い出したんだと思う。」
「なにかあったら言ってね彼女なんですから」
「ありがとうございます」
そんなことを言いながら笑い合う。
「さあもう夜も遅いからねるよー」
「わかりましたー。おやすみ」
「うん。おやすみ」
目を瞑るとふと夢をみた。
自分の家の中。朝からうるさいよと女性に言われている。
顔は見えないが、この人は誰なんだろうか。
怒られているのに幸せそうな自分がなんとも不思議だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます