第2話:深夜に見る夢

私は薬を手に取り、そっと口に含んだ。愛らしいフクロモモンガにエサを与え、静かに目を閉じる。薬の効果が全身を巡り、意識が遠のいていく。


すんなりと眠りにつければ、夢の中の旅に出られる。時には心躍るような冒険、時には心が温まるようなひとときを味わえることもある。しかし、眠れない夜が訪れると、話は別だ。


悪夢の影が忍び寄り、私の心を支配していく。以前、医師から処方された薬のおかげで、悪夢を見ることはなくなったはずだった。しかし、その効果は長くは続かない。眠れない夜には、必ずと言っていいほど、悪夢が私を襲う。


昨日の夜は、まさにその悪夢の典型だった。まるでゾンビ映画のような世界。追いかけてくるのは、恐ろしい怪物ではなく、私の父と母だった。


夢の中で私は、建て替えられる予定の実家の空っぽの部屋にいた。古びたフローリングに薄汚れた布団が敷かれ、私はそこで目を覚ます。そこに現れたのは、冷酷な表情をした父と母。恐怖に駆られ、私は必死に逃げ回る。


私は、実家も、両親も、そしてその地域さえも嫌いだ。その強い思いが、悪夢を生み出すのだろう。空を飛び、逃げ回るのも定番の展開だ。まるでペットのフクロモモンガのように、自由自在に宙を舞う。しかし、夢の中の私は決して反撃することができない。捕まれば、想像を絶する拷問が待っているからだ。


夢の中の私は、どこかネガティブな思考に囚われているようだ。一般的に夢というのは、自分の都合の良いように展開していくという。苦しすぎる状況になれば、自ら結末を書き換えて、ハッピーエンドへと導くらしい。しかし、私にはその力がない。


それでも、昨日の夢だけは少し違った。最後まで逃げ続け、朝を迎えることができたのだ。もちろん、現実的な安全地帯にたどり着いたわけではない。リアルのフクロモモンガに起こされるまでの間、夢の中でひたすら逃げ続けただけだ。しかし、それでも昨日の朝は、少しだけ清々しい気持ちで目覚めることができた。


息切れを感じながらも、私は朝のルーティンをこなしていく。淹れたてのコーヒーの香りに包まれながら、フクロモモンガの愛らしい姿を見守る。今日も、平穏な一日が始まる。


昨日の悪夢は、まだマシな方だった。それでも、私の朝に安らぎをもたらしてくれるものは、決して多くない。息切れと共に訪れる、日常の喧騒。今日も、私は夢と現実の狭間で戦い続ける。

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