1-3話
五人が去った後、何やら深く考え込むユキハに、トウヤは違和感を覚え声をかける。
「どした? 確かにあの先輩達変わってるけど、それ関係か?」
「え? あぁいや、そうじゃなくて。ちょっと気になることがあってね。あ! もうこんな時間だよ! 私達も急がなきゃ」
話を打ち切る形でトウヤに腕時計を見せると、長年見せてこなかった無邪気な笑みで走り出す。それを見守るトウヤは安堵の息を漏らした。
変わった五人組と別れ、学院に向かって歩いていると各学年に何人か面をつけ顔を隠している生徒たちと遭遇する。しかしその面はマグナ達と違い、面の左右どちらか半分は黒く塗りつぶされており、その面に見つめられた二人は強い威圧感を感じ、二人は委縮してしまう。
そんな中でも、入学式はつつがなく終了し、ユキハはほっと一息ついた。
「入学式終わったな。今日はどうする? 施設に戻るか、市場に繰り出すか――」
そう問いながらも、わくわく感を隠せずにいるトウヤを見たユキハは笑みをこぼす。
「今日は遊ぼうか! それも思いっきりね!」
「よっしゃ!」
意気揚々と講堂を後にする中、トウヤはずっと疑問だったひとつの事柄を口にする。
「でも、あいつら何だったんだ? ずっとお前のこと見てただろ」
「うーん。軽蔑の視線ではなかったけど」
「――あぁ、あいつらはダメだった奴ら。ほら、迎えに来たぞ。場所はここから変えた方がいいな。アイリス、頼むわ」
入学式が終わるのを校門前で待っていたマグナ達は、出てきた二人に声をかける。
そしてマグナの指示に従い、アイリスは髪にベルトで固定していた鳥柄の面を外し装着すると、二メートル丈に届きそうな薄水色の翼が背に生え、右手をユキハに差し出した。
そんな人外で珍妙な出来事だというのに、当のユキハは何の疑問も浮かばず、そっとその手を握り返す。
「お、おいユキハ⁉」
「お話があります。トウヤ君も我々と共に」
そう言い二人の手を取り、羽ばたき宙を舞うと、アイリスはいつもの裏山へと向かっていき、その様子を見守ったゼロを除く三人はそれぞれ持つ仮面を装着していく。
「ゼロ、お前はどうする?」
マグナの問いに少し悩んだ後、ゼロはきっぱりと答える。
「ユキハとはこれから話す機会はいくらでもあるからな。今日はお前らに譲るとする。お前ら行ってこい」
「さんきゅ!」
ゼロの一声に三人は仮面の下で満面の笑みを浮かべ、それぞれ獣のような機敏な動きで後を追っていった。
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