金子ふみよ

第1話

時速四〇キロの

箱の中から

視界が捉えた

火葬場の煙突

誰かが煙となって

空へ消えていく


瞬く間に

灰色を広げていった雲から

フロントガラスを濡らす

雨が降ってくる

煙となったその人が

あるいは

煙となったその人のために

誰かが泣いているからだろう


雲間から太陽が覗く

ワイパーを動かす必要もなくなった

火葬場の煙突からは

煙はもう上がらなかった

みんな泣き止んだのだろう

そして

その顔に笑みが浮かぶ時が来るのだろう

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金子ふみよ @fmy-knk_03_21

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