第五夜 星の声
「ここが星の丘か」
夜、到着してすぐに辺りを見回す。観光地であるこの星の丘の人気は高いので来ている人も多いのだろうと思っていたが、意外にもそこにいたのは俺しかいなかった。
「ここで流れ星に願いをこめればそれは叶うとネットで言われてきたけど……本当なのかな」
少し不安になったけれど、俺はすぐにその不安を追い払うために頭を振った。
「不安になっても仕方ない。とりあえず流れ星が降るまで待とう」
俺は持参してきたピクニックシートを敷いてその上に座った。頭上に広がる星空はとても綺麗で、吹き抜ける風も涼しかった。
そうして待ち続けていたその時、空にキラリと光るものが見えた。
「あれは、流れ星……!」
嬉しさから思わず立ち上がった後、俺は手を固く握り合わせながらギュッと目を閉じた。
「恋人に会いたい……! 恋人に会いたい……! 恋人に会いたい……!!」
必死になって願う。去年亡くなった小さい頃からの恋人の顔を頭に思い浮かべながら。
突然の病気で亡くなった俺の彼女。また彼女に会えたり話せたりするなら俺はなんでもする。それだけ大事な存在だったからだ。
「お願いします……! お願いします……! お願いします……!!」
三回以上願っているからか声が段々にかすれていく。そうして願い続けていたその時だった。
『私は幸せだったよ』
「え……」
彼女の声が聞こえた。もちろん、そばには誰もいないし、既に亡くなっている彼女の声が聞こえるはずもない。だけど、たしかに聞こえたのだ。
「幸せだった、か……」
彼氏として彼女のために色々頑張ってきたつもりだ。色々満足させてあげられなかった事もあるかもと思っていたが、彼女はそれでも幸せを感じてくれていたようだった。
「……よかった」
そんな言葉が漏れ、目からは涙が溢れる。そうして俺はしばらくの間泣き続けた。星になってしまった彼女とのこれまでの輝く思い出を振り返りながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます