第四夜 星の光

「星が観たい」



 闘病中の妹が最期に言っていた言葉だ。妹は生まれてからずっと身体が弱くて、たまに退院出来て家で過ごせたとしてもまたすぐに体調を崩して入院するといった生活を続けていた。



「……この辺なら良いかな」



 家の近くにある裏山の頂上で俺は呟く。手の中にはまだ生きていた頃の妹の写真があり、頭上には綺麗な星空が広がっていた。



「ほら、ようやく見せられたぞ。満天の星空だ」



 妹の写真を空に向かって掲げる。風一つ吹いていない日だったからこそ写真が飛んでいく心配はなかったが、もう既に喪っているからこそこの写真すら失うのは勘弁だった。



「お前の事だからきっと百点満点の星空なんてスゴいって言うんだろうな。言葉……間違ってるのにな……!」



 俺の目から涙が次々に溢れる。妹の命の灯が消えたのは一月ほど前だ。妹は俺達を心配させまいとして元気に振る舞っていたが、それでも哀しそうに俯いている姿を見かけないわけではなかった。自分と同じくらいの年の子達が色々なところに行けたり様々な事が出来たりする中、自分は病気のせいでそれが出来ない。その辛さや悲しさ、悔しさや無力さをわかってやれない事が心から辛かった。



「……でも、今のお前は星その物になった。いつでも星を観られるし触る事だって出来る。俺達に出来ない事をお前なら出来るんだ」



 星空の向こうに楽しそうに駆け回る妹の姿を見た気がした。もちろんそれは幻でしかなくて、星になったというのだって本当に星になったわけではない。けれど、頭上に広がる星空を彩る星の一つになったのだと俺は思っている。



「……これは神様がお前にくれたよく頑張りましたのご褒美だ。その高いところからずっと見ていてくれ。俺もお前に負けないくらいに輝いて生きてみせるから」



 空に向かって呼び掛ける。当然答えは返ってこない。だけど、俺には返ってきたように聞こえたんだ。頑張ってね、と。

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