第三夜 星空の瞳

「これじゃあ見えないね、星」

「うん……」



 窓の向こうを見ながら答える。空からは大粒の雨が降っていて、厚い雲で覆われていた。



「そろそろ七夕だから少し早い天体観測でもしようかって思ったけど、これじゃあ仕方ないよね」

「残念だけどね」



 幼馴染みの子が哀しそうに俯く。その姿を見て僕はいてもたってもいられなくなったけれど、どうしたらいいかわからなかった。そしてしばらく考えたその時、僕はある事を思い付いた。



「そうだ、これなら……!」

「どうしたの?」

「ちょっと待っててね」



 僕は色紙やハサミを取りだし、ハサミを使って色紙を切り始めた。幼馴染みの子は何をしているんだろうという顔で作業を見ていたけれど、やがて何をしているのかわかったのか自分もハサミやペンを持って作業を始めた。


 そうして作業を続ける事およそ三十分、僕達は並んで床に寝転んでいた。その目の前には綺麗な星空が広がっていて、幼馴染みの子はうっとりしながら星空を見ていた。



「綺麗だね……」

「うん。でも、もっと綺麗な星空を見せてあげられたらよかったんだけど……」

「そんなことないよ。この色紙や画用紙で出来た星空でも十分綺麗だから」



 僕達の目の前に広がっているのは画用紙を黒く塗った星空と黄色の色紙で作った星や白い点を繋げて書いた星座で、本当に見たかった星空に比べればチープな物だった。けれど、幼馴染みの子の目は星の輝きにも負けない程に輝いていて、その目の中の星空に僕は見惚れてしまった。



「綺麗だな……」

「え?」

「う、ううん。なんにも」

「そっか。ありがとうね、私に星空を見せてくれて」

「どういたしまして」



 そうして僕達はしばらく紙の星空を見上げていた。もちろんその星空も綺麗だったし、思い出には残ったけれど、僕にとっては幼馴染みの子の目の中の星空に勝る程の物はないと思えていて、その輝きはいつまでも僕の心を掴んで離さなかった。

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