第51話 デート②

 ハンバーグを食べて俺たちはレストランを出た。


「はあ、食べた食べた。で、これからどうする?」


 市村は言った。俺には少し考えがあった。


「あのときの約束を果たしたい」


「約束?」


「うん。亜衣に服を買ってあげるって言っただろ」


 長島と町田たちとダブルデートしたとき、キャップを買ってあげたが、その時にそういう話をしていた。


「また秀明にお金を使わせるなんて、悪いよ」


「だから、いいんだって。俺が買いたいんだから俺の買い物だよ」


「ほんとに……私に甘いんだから。今日だけだよ」


「うん。買わせてくれ」


「わかったよ。じゃあ、見よう!」


 こうして俺たちは店を見て歩く。

 俺はワンピースのコーナーで立ち止まった。


「これとかどうかな?」


 俺は白いワンピースを選んでみた。


「秀明、本気で言ってる?」


「うん。本気だけど」


「可愛いすぎでしょ。少女感がすごいよ」


「だから選んだんだけど。とりあえず着てみてよ」


「む、無理だよ!」


「いいから、着てみるだけ着てみて」


「もう……着てみるだけだからね」


 そう言って市村は試着室に入る。少し経って言った。


「やっぱり似合わないよ……」


「見ていい?」


「いい……けど」


 カーテンが開く。すると、そこに居たのは夏の少女という感じの市村だった。


「ふむ。これだとキャップよりも麦わら帽子が必要だな。どこに売ってあるかな……」


「真面目に考えないでよ! これは却下!」


「えー! 可愛らしいのに……」


「この格好で部員に会ったら爆笑されるよ。だめだめ」


 市村はカーテンを閉め、元の服に戻った。

 仕方ない、さらに俺は服を探す。そして、いろいろと提案してみたがどれも可愛すぎてだめと言われてしまった。うーん、どうしよう。そう思ったときに見つけたのがデニムのワンピースだ。


「これとかはどうかな」


 俺はそれを市村に見せる。少しフリルが付いたやつだが大人っぽくはある。


「これはいいけど……スカート短くない?」


「そうかな。女子高生なら普通だろ」


「私、太もも太いから隠したいんだよね」


「大丈夫だって。着てみてよ」


「うぅ、秀明が喜ぶのなら仕方ないか……」


 市村は今日二回目の試着室に行った。


「うーん、やっぱり短いよ」


 そう言ってカーテンを開ける。これはかわいい。とても似合っている。スカート丈は膝の少し上といった感じだ。


「これぐらいならいいんじゃない?」


「いや、ダメでしょ。太もも見えるし」


「大丈夫だって。すっごくかわいい」


「そうかなあ」


 市村は角度を変えて何度も鏡を見た。


「……どうしても買いたい?」


 市村が俺に聞く。


「買いたい」


「じゃあ、仕方ないか」


「やった!」


 俺は喜んだ。


「このまま着ていこうよ」


「えー!!」


 市村が言う。


「だって、可愛いし……」


「もう……部員に会ったらどうするのよ」


「うーん、じゃあ、この後あんまり部員が居なさそうなところに行こうよ」


「……しょうがないなあ、わかったよ。そこまで言うなら」


 ということで、市村はデニムの膝上ぐらいのワンピースを着たまま、俺がお金を支払った。


「あ、ありがと」


「俺のわがままで着せているだけだから。むしろ着てもらってありがとうだよ」


 俺はそう言って歩き出した。


「で、どこ行こうか?」


「え、あんまり部員が来ない場所って言ってなかった?」


「具体的に考えてなかった」


「もう……じゃあ、今度は秀明の行きたいところ行こうか」


「俺の?」


「うん。だって前回も私の行きたいところばっかりだったし。秀明の行きたい場所なら部員と出会う確率は低そうでしょ」


「確かにそうだな」


 ということは、あそこだな。

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