第44話 怜香にお礼(市村亜衣 side)

 翌日、練習前に私、市村亜衣は町田怜香とカフェに来ていた。

 昨日のお礼をするためだ。


「怜香、昨日はありがとう。いろいろ、動いてくれたみたいで」


「いいよ、別に。チームのためだもん。私、キャプテンだからね」


「でもありがとう。すごく助かったよ」


「それならよかった」


「でも、竹本さんが居て急に謝ってきたからびっくりしたよ」


「私がきつく言っておいたからね。でも効果がどこまであるかは分かんないわよ。だって、別に亜衣は熊谷君と付き合ってるわけじゃないんだし、文句は言えないでしょ?」


「う、うん……」


「だから、もし熊谷君が夏鈴を選ぶんだったら私はもう何も言わないから」


「そ、そっか……そうだよね」


「そうよ。だから早くちゃんとした方がいいと思うよ」


「うん……実は昨日、熊谷君と少しそういう話したんだ」


「へぇー、どんな?」


「私たち、友達の範囲超えてるんじゃないかって」


「へぇー、それに対し熊谷君はなんて言ったの?」


「『俺はもうずっとそうだよ』って」


「ほう。じゃあ、そのまま告白されたの?」


「ううん。『別に関係を急に変えようとか思ってない』って」


「あらら、やっぱヘタレだわ、あいつ」


「でも、私も急にそんなことになっても困るから……」


「あのね、そんなこと言ってるから今回のようなことになったんじゃない?」


「うん……」


「私にはどこがいいのかわかんないけど、熊谷のことをいいって思ってる子が他にも居るかもしれないよ」


「え!?」


「だって、夏鈴が目を付けるぐらいだからねえ。二学期になったら結構人気になるかも」


「こ、困るよ、それは……」


「だったらちゃんとしないと」


「う、うん……」


「亜衣はプライベートがすぐ試合に出ちゃうんだから。熊谷君のこと、ちゃんとしないと週末の皇后杯もやばいんじゃない?」


「そうだね……迷惑掛けちゃうかも」


「それはチームとして困る。気合い入れてもらわないと。大事な大会だよ? うちら、優勝候補だからね。しっかり勝たないと」


「わかってるよ……」


「じゃあ、どうする?」


「う、うん……だったら、県大会で優勝して……」


「優勝して?」


「ゆ、優勝して告白する!」


 私は思いきって言った。


「おー! 言ったね、亜衣。優勝して告白ね」


「う、うん……」


「じゃあ、優勝しなかったら告白はお預けだから。そうなったら、夏鈴がまた動いてくるかもしれないよ」


「そ、そうかも……」


「だから、優勝目指して気合い入れてね」


「わ、わかった」


 こうなったら、優勝するしかない。皇后杯予選で優勝して……熊谷君に告白する!


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