第2話 挑戦,はんだ付け!!!!
「じゃあ、はんだ付けの下準備として部品を設置していこうか。今回使うのはコレ!ユニバーサル基板!!」
目の前に差し出されたのは、ただの等間隔に穴が空いただけの黄色の板。
「これが基板ですか?」
基板といえば緑色の板の上に沢山の小さな部品がのっている印象だ。目の前に差し出されたものとはかけ離れている。
「そう思うのも無理はないよ。基板には大きく分けて二種類あるの。生活でよく見る緑色で白い線が沢山入ってるのはプリント基板。元々中に配線がされてあって、パーツを付けるだけで動作するのがメリット。だけど、予め配線が決まっているからこそ自由に部品を設置ができないことがデメリット。今回使うこのユニバーサル基盤は、逆に元々配線が決まっていないから部品の数や種類、配置も何もかもが作り手の自由自在ってわけ」
なるほど、この基板はいつも生活で見るものとは別物なのか。
「ん〜とね。まずはそれぞれの部品の脚、つまり部品から出る線を穴の幅に合わせて差し込んでみて」
回路というからには繋がっていなくては意味がない。少し間を空けながらもそれぞれの部品が繋がるぐらいの距離感に設置、電流を抑制する抵抗器は電源と繋がる2ピンコネクタとLEDの間がいいだろう。色々と予想しながらパーツを穴にはめていく。
「すごいじゃん、配置完璧だよ」
3つのパーツをすべてはめると横で見ていた先輩が褒めてくれた。先輩に褒められるなんて初めてだ。すこし照れる。
「そしたら....基板裏側から飛び出た部品の脚を、次に電気を流すパーツの方向に曲げてみて。これで、部品の脚を通して電気が流れるようになるから、後ははんだでくっつけるだけだね」
とうとう、はんだ付けの工程に入るらしい。失敗したら....と考えると緊張してしまう。
「はんだごては....よし、温まってる。それじゃあ、早速はんだ付けに....って、忘れてた!」
「何をですか?」
「まだお互い自己紹介してないじゃん、作業前にやっておこうよ!!」
言われてみれば確かに私はこの先輩の名前を知らない。
「まずは私から自己紹介するね!。私の名前は
「えっと....春風 まひろ です。よろしくお願いします、夏目先輩」
「え~~、別に先輩付けしなくてもいいよ。あや、って呼んで」
流石に先輩をあだ名で呼び捨てにするわけにはいかない。
「だったら....あや先輩?」
「上下関係とか気にしなくていいのになぁ。う~ん、まあギリギリ良し。よろしくね、まーちゃん!!」
どうやら私のあだ名はどう足掻いても、まーちゃん に行き着くらしい。別に不満はないから良いのだけれど。
「それじゃあ、作業始めよっか。まず、そこにある台座からこてを手に取ってみて。持ち手の部分以外はめちゃくちゃ熱いから気を付けてね」
台座からこてを手に取る。こては青色の太いグリップが付いており、グリップより先は銀色でシャープペンシルのような形状をしていた。
「次は利き手じゃない方の手でこれを持って」
そういって、長い針金のような銀線を渡される。一体これは何なのだろう。
「あの、この針金みたいなヤツってなんですか?」
「あ~これ?、これははんだ。鈴が主成分の合金で他の金属に比べて溶けやすくて固まりやすい、っていう特徴があるの。このはんだを熱いこて先で溶かして部品同士をくっつけることをはんだ付けっていうの」
なるほど、機械の基板のパーツはこうやって接着されていたのか。
「手順を説明するね。まずは、こて先を接着したい部分に3~4秒あてて温める。その後、そこにはんだをあてて少量溶かしたらはんだを離す。最後にこてを離せば完璧!!。もしもこて先にはんだが付いたままになっちゃったら、このクリーナーの中に入れグリグリすれば治るから」
そう言って先輩は台座についてる金色のタワシの入った容器を指さす。これで本当にこて先のはんだがとれるのだろうか。
「まぁ、最悪横で私が見てるから何とかなるよ。」
難しそうではあるがやってみるしかない。
「頑張ります....!!」
「いざとなったら、任せろ!!」
あや先輩が片手でgoodサインをつくる。困ったら頼らせていただこう。
◇
「あの、これでいいですか?」
指示通りはんだ付けをした基盤を先輩に見せる。
結論から言おう、なんとかなった。あらかじめ言われた手順の通りにやってみたら特に問題なく全部の箇所をはんだ付けすることができた。あとは、LEDが点けば完璧である。ちなみに、金色のタワシはきっちりこて先を綺麗にしてる活躍を見せた。
「おっ、これは....いい感じだね。早速電源に繫げてみようか」
メス端子に電源が繋がったオス端子を接続すると、
ピカッ
光った。
「やったぁ...」
思わず声が出た。嬉しさが込み上げてくる。今まで工作などのモノ作りをしてこなかった人生、だからこそ自分が作ったものが正常に動作してくれることが人一倍嬉しい。
「すごいじゃん!!、初めてなのによく頑張ったね」
そういってあや先輩がそっと頭を撫でてきた。やっぱり、この人は距離が近い。とはいえ、出会った時のような嫌悪感はなくなっていた。
「どう?楽しかった?」
「....はい」
久しぶりに集中して物事に打ち込めたし、今までにない達成感を得ることができた。楽しくない、などといえば全くの嘘になる。
「よかったぁ。少しでも入部検討してくれると嬉しいな」
そうだった、これはあくまで体験。
もうこれで終わり。
二度とあや先輩とは関われないだろうし、あの達成感も味わえない。...........そんなのは嫌だっ!!!!。
覚悟を決めろ、春風まひろ!!!!!!!!!!
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