第3話 新しい先輩との出会い

「....します」


「えっ?」


「入部します!!」


 あや先輩は驚いたような顔をみせ数秒硬直する。


「本当に入部してくれるの....?」


「はい、入部します」


「..........」


 再度数秒間の沈黙。


「ありがとぉぉぉお!!。回路班、先輩卒業したせいで今2人しかいなくて....。人手不足で....とにかく、助かったよ!」


 ガバッ


 先輩はよほど嬉しいのか私に感謝の言葉を述べながら抱きついてきた。

 えっ、いやなんで抱きつかれてるの? というか、全然放してくれないんだけど!?。


 クンクン


 何故か先輩が匂いを嗅いできた。もしかして、臭かった....?


「あぁ、いい匂い....」


 ヒエッッ!!!!!!!!!!

 この先輩、頼りにはなるけど絶対普通じゃない!!


「ちょっ、放してくだs....」


「もうちょっとだけ!お願いっっ!!私の匂いも嗅いでいいから!!!」


 どうやら、あや先輩に私を放す気は全くないらしい。あや先輩からは、ほんのり甘くて華やかないい匂いがした。それはそうとして、自分の匂い嗅がれるのは恥ずかしいんですけど....!!??


、やめなよ。せっかくの新入部員が嫌がってる」


 クールで落ち着きのある女性の声が聞こえてきた。声のした方へ目線を向けると、そこにはキッチリ制服を着てボストン眼鏡をかけた茶髪ショートボブの美少女が立っている。真面目そうな雰囲気を纏っており、ギャルのあや先輩とはまるっきり対照的だ。あや先輩を呼び捨てにするということはこの人も先輩なのだろうか。


「え〜、折角の新入部員堪能しないと!」


 あや先輩が私に抱きついた状態のまま、声の主である眼鏡の先輩に反論する。


「これが理由で退部されたらどうするの?」


「仕方ないなぁ」


 そう言ってあや先輩は私を開放した。


「ごめんね、ウチのあやが迷惑かけて」


 眼鏡の先輩が私に頭を下げる。


「まーちゃん、迷惑だった?」


  あや先輩が申し訳なさそうに声をかけてくる。正直、抱きつかれた時嫌悪感は沸かなかった。

 だけど....


「突然抱きついてくるのはびっくりします!!」


「抱きつかれること自体は嫌じゃなかった?」


 あや先輩は痛いところを突いてくる。


「....................」


「ごめん、注意してまで止めないほうが良かった?」


 少し申し訳なさそうに、眼鏡の先輩が聞いてきた。


「あっ、いや....そういう訳ではくて....」


 恥ずかしさで体が芯から熱くなる。言えない。抱きつかれて嫌どころかむしろ、ドキドキしたし少し心地が良いとも感じたなんて。自分の首を絞めてしまった。早く話題を変えなければ。


「あのっ....失礼ですがどちらさまですか?」


「そっか、新入部員だもんね。まずは自己紹介しないと。私の名前は冬崎 葵ふゆさき あおい。あやと同じ2年生よ」


「よ..よろしくお願いします。冬崎先輩も回路班なんですか?」


「そうだね、回路班は私とあやの2人。春風さんで3人目。あと、私も下の名前で呼んでくれていいから」


「どうして私の名前を?」


「さっきから、あやとの会話ずっと聞こえてきたから」


「私も下の名前で呼んでください。全然呼び捨てでいいので!!」


「じゃあ、よろしくね。まひろ」


「よろしくお願いします、葵先輩!」


 あや先輩には失礼だが、あや先輩よりも初対面で接しやすい。それと、まだ私にはまだ先輩に質問しなければならない重大なことがある。


「あのぉ....、私まだ高校生ロボコンにつてよく知らないんですけど」


 勢いでロボコン部という謎部活(?)に入部を決めたのはいいが、正直私は高校生ロボコンについて全然知らない。


「葵、説明よろしく!」


「....りょーかい。まず、Kロボコン高校生ロボコンは最近設立されたばっかりの大会だから知らないのが普通だから気にしなくていいよ。N〇Kでやってる高専ロボコンって知ってる?」


 高専ロボコンは、家でお父さんが観てるのを少しだけ盗み見したことがある。『玉入れ』や『ざるそばの出前』などユニークな競技に真剣に取り組む高専生が格好良かった。


「はい、少しだけなら」


「基本的には同じ。だけど、高専生や工業高校生以外にも工学分野に興味を持ってもらうことが目的の大会だから、出場できるのが普通高校だけっていうのが大きな違いかな。今年の地区大会は10月、ルールは来月末5月末にでる予定だから今は少し余裕がある」


「そうそう、葵の言う通り今は私たち今めっちゃ暇なんだよね~。そういえば、まーちゃんって回路班に仲間入りで大丈夫???」


 言われてみれば、確かにということは他の班も存在するのか。


「他にどんな班があるんですか?」


「ん~とね....、ロボコン部には全部で3つの班があるんだ。ロボットの機体を作る『機械班』、プログラミングを担当する『制御班』。そしてロボットに搭載する電子回路を作成する私と葵の『回路班』。どう、入りたい班はある?」


 他の班の活動内容も気になるが、私の入りたい班は最初から決まっている。迷う必要はない。


「回路班に入りたいです」


 あや先輩はニヤッと、葵先輩は静かにほほ笑む。私はあくまでこの先輩たちと部活がしたいのだ。


「じゃあ、私とあやの2人で電子回路の基本について色々教えていくつもりだから改めてよろしく」


「わかりました。頑張ります!!」


 足手まといににだけは絶対になりたくない。教えてもらったことをしっかり吸収して少しでも回路班に貢献してやる!!


「あっ、ごめん2人共!私明日用事あるから部活来れないんだ。葵、まーちゃんのこと頼める?」


「任せて」


「ありがと〜!」


明日は葵先輩と一対一になるらしい。少し緊張するけど、仲良くなれるといいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る