カミングアウト

「いいよ。どうしたんだ?」先生はすぐに了承の返事をしてくれた。私の母は外面だけはいいので仲の良い家族で通っているはずだ。何から話せばいいのかわからなくて少し悩んが前みたいに全部話すことにした。そして私は今の状況やそうなった理由、されてきたことや言われて嫌だったこと、最後にそれだも母と一緒に暮らしたい旨を先生に話した。私の中では父と3人で暮らしたときの母がまだ消えていないのだと。話している最中先生は相づちとともに涙を流していた。すべて話終えたとき私もつられて泣いていた。

「ほんとに俺は何も知らなかったんだな。片栗のこと。話してくれてありがとう。もしよかったら家庭訪問に行こうか?」そう提案してきてくれたがそれをされてはまずいことになってしまう。

「嬉しいですけどさんなことしちゃったらもっとひどくなっちゃうから、」はっきりとは伝えないが来てほしくないという私の意思は先生に伝わった。先生は短く

「わかった。」とだけ返事をした。それから色々先生に聞かれたが詳しいことは何も聞かせれていなかったので結局伝えられたのは、母と住みたいということと、これもまた欲張りな願望に過ぎないがこれ以上傷つきたくないということだけだった。

話が終わりお礼と別れの挨拶を告げ校門をくぐろうとしたときまた葵の姿があった。

「遅かったね。またお説教?」待っていることがさも自然のように話しかけてくるが葵は今まで陸上部の子たちと帰っていたはずだ。それなのに最近は果たしのことを待ってまでその子達と帰らないようにしている。何かあったのかな。と心配になり聞いてみたが

「そういう気分なだけでなにもないよ」とはぐらかされてしまった。それからは葵が放課後の教室での先生との会話のことを聞いてきたから、また怒られたことにして適当に話を作った。葵との分かれ道。昨日と同じように

「じゃあまた明日ね。」と手を振り合いお互い違う方向に歩きだす。

「私は真陽の味方だよ。何かあったらいつでも頼ってね!」

やはり葵は最強の味方なのだと私は確信した。

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