【青春の色と夏空】
ミーンミンミンミンミーンミンミンミン…
シャワシャワシャワシャワシャワシャワ…
うだるような暑さのプラットホーム、蝉たちの大合唱がその暑さをより一層演出してくる。
「あっちぃ〜…。」
俺はその暑さに少しでも対抗するべく、シャツの襟元を摘んでパタパタと風を扇いだ。
早く電車来ねぇかなぁ。そしたら車内の冷たい空気が俺を心地よく迎えてくれるのに。一途に待ってるこの俺の純情な片思い感よ。今にも会いたいくらいお前が恋しいんだぜ。
なんて、電車に対していかにも頭の悪い思考がよぎる。いや、これは暑さのせいで俺は悪くない。
「はぁーーーー。」
思わずため息を吐く。余計に暑くなった気がした。
「デッケェため息。」
その声と同時に首筋に冷たい何かが触れ、うぉっと驚きで肩がビクついた。
「はは、驚いてやんの。」
イタズラが成功したとばかりにニヤリと笑うそいつは俺の幼馴染で、これやるよ、と先程俺の首筋に当ててきた炭酸飲料のペットボトルを俺に寄越した。
「さんきゅー。てかなに、お前も部活?」
「そ。美術部なんだから別に家でもいいだろって言いたいところだけど、俺が今描いてるの100号ってめっちゃデケェ絵だから美術室でしか描けなくて。」
「あー、お前確か今描いてる絵を持ち込みで美大の推薦行くんだもんな。」
「そーなんだよ。だからぜってぇ半端なもんには出来ねぇし。何がなんでも良いもん描いてやる。ってことでこのクソ暑い中俺も登校しなきゃいけないワケですよ。」
「大変だなぁ。」
そう言って肩を叩くと、お前もな、と苦笑いを返された。
「お前だって大学のスポーツ推薦枠狙って高三の夏って時期にサッカーやってるんだろ。炎天下の中でボール追っかけて走り回って。俺なら絶対無理。途中で倒れる自信あるね。」
そんな自信持つなよ…と俺も苦笑いをする。
「まぁでも、お互い頑張ろうぜ。この夏を乗りきって、秋も冬も一緒にバカやって過ごして。春からは別々になるだろうし、だからこそ今のうちに出来ることは全部しとかねぇと。」
そう言ってカラッと笑ったソイツに俺もそうだなっとクシャッと笑う。
お互いそれぞれ別の道を歩いていくけれど、途中途中で交わって、バカやって、くだらない話をして、そして未来を進んでいく。俺たちはずっとこうして腐れ縁として繋がっていくんだろう。
ピーーー…という長い音と同時に電車が近づいてくる。
「やっと来たよ。行こうぜ。」
おう。そう言って俺たちは電車に乗り込んだ。
車内は思った通り涼しくて、気持ちよくて、でもこの窓の外の景色を見るのはあとどれくらいだろう…なんて思いながら電車に揺られる。
俺たちの青春の色が、またひとつ増えた気がした。
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