【俺たちの青春は確かに青色だった】
「パスくれ!パスー!!」
「今のうちに走り込めー!!」
「敵に抜けられるなよ!周りしっかり囲め!!」
仲間たちの大きな声が響き渡る中、俺も一緒になって芝生を駆ける。ユニフォームに汗が染み付いて肌にまとわりつく。はーっ、はーっと乱れた呼吸を落ち着かせるように立ち止まって、少しだけ体を休ませようとした。腰に手を置き視線を上に向ける。見えた先にあったのは、綺麗に晴れていてとても鮮やかな青空だった。
「すげぇ綺麗...。」
一瞬だけ見ていたつもりが、思いのほか長いこと青空に目を奪われていたようで、
「こらそこ!ぼーっとすんな!走れ走れ!」
顧問の先生に怒られてしまった。先生の怒号ではっと意識をサッカーに向け直す。
「うっす、すいません!」
そして俺はまたボールを追いかけて走り出した。
「おーい、こっち部活終わったから迎えに来たぞー。早く帰ろーぜ。」
部活終わりにいつものように美術室へ寄る。
そこには、幼馴染がキャンバスに向かって絵を描いていた。
「ん。もうあと片付けるだけだからもうちょい待ってて。」
筆を置いてそう言った彼は、エプロンを脱ぎ筆を持って水道まで向かっていく。
俺は構わずさっきまで幼馴染が描いていた絵の方に向かっていた。今日は何を描いたんだろうか...なんて思いながらイーゼルに立て掛けられたキャンバスを覗き込む。
「あれ。お前、これって...」
そこには一面の青空が広がっていた。その空は、まるで部活中に目を奪われた時のような、鮮やかな青だった。
「あぁ、これな。今日の部活の課題が風景画だったんだよ。でも描きたいものにいまいちピンと来なくてさ。そしたら渡り廊下でお前を見つけて。
お前ぼーっと上見てて先生に怒られてたろ。」
くすくすとからかうように彼が言う。
「何をそんなに見てるんだろうって気になってさ、俺も上向いたんだ。そしたら空がすっげぇ綺麗で。あぁ、お前はコレに見とれてたんだなーって。そしたら俺もこの空が気に入っちゃってさ。描きたくなったんだ、この空。」
一面青で埋め尽くされたその絵をもう一度見て俺は呟く。
「...うん。良いじゃん、この絵。」
「当たり前だろ。なんせ俺が描いたんだからな。」
そう言ってふふんと鼻を鳴らすそいつに調子乗んなと軽く蹴りを入れる。
「なぁ、帰りコロッケ買って食おーぜ。」
「良いねぇ、駅前の肉屋のコロッケ。美味いんだよなぁ。」
こうした何気ない日常が、いつまで続くのか分からないが、俺たちは多分大人になったらこう言うんだろう。
あの時は確かに青春してたな...なんて。
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