第11話音葉の小学校始めての運動会だった。
上級生達の徒競走。
「ハーフ〜。ハー」
息を切らして疲れモードの上級生。それが続いていた。種目をする毎に気持ちが落ち込み、活気が無くなってしまっている。C組以下はもう既に諦めていたのだ。こんな状態でまともな騎馬戦が出来るとは思えない。かつて前の学校の運動会でも、同じ様な事があった。航平君率いる紅組に毎年負けていた白組だったが、最後の年に白組は勝った。モチベーション次第では奇跡も生まれる事も起こる。圧倒的な差はある。しかし、騎馬戦においては少なくともなんちゃって騎馬戦に置いてはその限りでは無い。工夫次第ではコロっと化けるのだ。ただ、絶対に勝つと言う気迫があっての事だ。今はそれが全く無い。そんな中で、なんちゃって騎馬戦は始まった。僕はただ、応援するだけだ。
「ウォー。ワーー。行くぞー!」
「オー。勝ちに行くぞー。行け行け〜」
勢い良く出出した騎馬。互いが風船を割り、ハチマキを取って行く。A組チームは絶対に負けられない。役に立たないのが怖いのだ。それが返って彼らを萎縮させてしまっている。それでも、A組には最強チームが居る。一方で、B組にもA組に匹敵する強者はいる。寧ろ、A組よりも強い強者はいるのだ。しかし、圧倒的に強者の数が少ないのだ。なので、力も出せず、勢いで負けてしまうのだ。段々と気持ちを削がれ、やる気を出せず、萎縮して行った。そんな中であって、諦めていないのがH組の大将と五年生の男の子だった。だが、B組はじわじわと負けて行き、仕舞いには誰もいなくなった。そうなれば、H組の大将と五年生の男の子は周囲を囲まれてしまった。とても無理な数に囲まれて身動きが取れなくなった。
「ウォー。ワー。ワー」
この数の割には頑張って、ハチマキを取り続けている。
「前です!」
「後ろ気を付けて下さい!」
新葉は必死に応援する。
「スッゲェ〜。この数相手に気持ちで負けてねー。カッケー!」
樹君はワクワクしている。アドバイスをする新葉だったが聞き耳持たない上級生には届かなかった。音葉の小学生初めての運動会だったのにこんな形で終わって仕舞うのはやり切れない思いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます