Day11 錬金術

「お前、子供の頃に『あたしがかんがえたさいきょうのかいい』とかってやってそうだよな」


 と弔路谷怜ちようじたにれい言ったら、何を馬鹿なことを仰るという顔で「当然でしょ」と返された。

 あ、やっぱ考えたんだ……。


「今だって毎日考えてるし」

「今も考えてんのかよ。いい歳して何考えてんだよ」

「こういうのはね、年齢なんて関係ないんだよ。誰だって童心は忘れるべきではないし、いつだって子供還りして良いの! いい歳して〜なんて、そんなの差別だよ⁉︎ 差別よくない!」

「…………」


 何だか返答するのが面倒くさくなった僕は、特売で購入したポテトチップスを開く。独り占めしても良いが、そうすると弔路谷が煩いので最初からパーティー開けだ。

 パリパリと食べながら、よせば良いのに、僕は「今はどんな怪異を考えてるんだ?」と訊ねる。


「実はねぇ、もう出来上がってるのよ」

「え、そうなの?」

「うん。二十うん年前に、オギャーッと」

「あ、判った」

「あたしを指差して『お前が怪異だー!』って酷すぎない? ねえ? 失礼が過ぎるよ。あたしは立派な人間です!」


 お前のような人間が立派だなんて、世も末どころか地球お終いだなって感じだけれど。

 まあ、良いや。


「それじゃあ、お前が考えた『さいきょうのかいい』は何処に居るんだ?」

「ここに居るよ」

「え、何処?」

「ここ」


 バリバリとポテトチップスを嚙み砕きながら、弔路谷は油と調味料で汚れた指を指す。

 真っ直ぐに。


 僕を。

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