Day8 雷雨

 弔路谷怜ちょうじたにれいが独りで暮らす家だけがゲリラ豪雨に見舞われている。

 上空を覆う曇は黒々とし、時折稲光が走っている。縁側からぼんやりと見上げていると、ピカピカッと光ったのち「ピシャーン!!」と世界を真っ二つにするような音を立てて落ちた。


 直撃した樹が大きく裂ける。

 隣でスイカを貪る弔路谷が、呑気に「おぉ!」と感嘆の声を漏らす。


「すごーい! 見た!? ハジメくん!!」

「見たっつーか見えた」


 目前で起こったから嫌でも目に入る。


「かっこいーねえ!!」

「かっこいいっつーか、怖えよ。何この現象。何でお前ん家だけ大荒れなの? また呪われた?」


 弔路谷が呪いによる摩訶不思議現象に襲われるのは日常茶飯事である。

 そして悲しいかな、それに僕が巻き込まれるのも珍しい展開ではない。本当に悲しいことに。

 僕の質問に、弔路谷は「心外だ!」という顔をする。


「しょっちゅう呪われるわけないじゃない! 品行方正な、このあたしが!」

「あれ? 暑さで耳が可笑しくなったかな? 品行方正って聞こえた気がする」

「これは怪異や幽霊の呪いじゃありません! 神様です! ちょっと揶揄ったらオコになったんです!」

「やっぱ呪いじゃねーか」


 体内の酸素を全て吐き出すような、深く長い溜息を吐き出す。

 僕の言と溜息に呼応するように、再び「ピシャーン!」と雷が落ちる。今度は屋根に直撃したが、どういう原理か傷ひとつ付かず、停電にもならなかった。


 隣の弔路谷が、空を見上げて「へへっ」と笑う。馬鹿にするように。

 雨と雷の勢いが増す。


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