打ち明け花火(Reveal)


 玉屋だ鍵屋だ掛け声をかける花火も良いけれど、夜空に咲く大輪の花を見ながらこそっと打ち明けるのも素敵だ。


 ドーン、ッ、パッ。

「俺、君のことが」


 ドーン、ッ、パッ。

「実はあたし、黙ってたけど」


 ドーン、ッ、シャラシャラシャラ。

「殺した」


 ドーン、ッ、パパン。

「ごめんね、泣かないで」


 ドーン、ッ、パラパラ。

「あたし本当はおと」


 ドドン、ダン、ババババ。

「別れよう」


 ドーン、ドーン、ドーン、パッパッパッ。

「また来年も」


 間が空いて、次の花火が打ち上がるのか、それとももう終わりなのか。皆、はかりかねて夜空を見上げながら、微かにざわざわとどよめきが流れる。

 手をつなぐ恋人同士も、微妙な距離を空けて立つカップルも、肩車する親子も、拳銃をだらりと下げた男も、本当はそこにいない先輩とデートにきた女も、ただただ空を見上げている。


「その瞬間を丸ごとパックしたのがコレです。なかなか良いでしょう?」

 いつも愛想のいい商人が、ここぞとばかりに笑顔で勧めるので、だまされるのを覚悟で購入した。

 彼女と彼女の愛人とその父親と彼の守護霊とともに私はささやかなパーティを開き、その瞬間に閉じ込められた人々を肴にし、談笑と酒を楽しんだ。ところで、そのパーティの最中の話なんだが——

 いや、なんでも曝け出せばいいというものでもないな。また機会があったら、お話しましょう。

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