チョコミン党(お題:チョコミント)


 世界が変わってしまったのは、そう、あの時だったのかもしれない。

 チョコミン党が与党になり、憲法改正論が一気に押し進められた、あの時に。


 チョコミン党のマニフェストはひとつ。チョコミントの良さを知ってもらうために、食わず嫌いの人でも、一度はチョコミントを、しかもたった一度であるならば最上のものを、というものだった。

「またよくわかんないのが出てきたね」

「まあ枯れ木も山のにぎわいっていうし」

 政治とは、そういうものではなく、もっと国民の幸福を考え、そこに尽力するために行われるものだと、うすらぼんやりとではあっても皆考えていた。

 だが、そこでハタと立ち止まる。

 そんな政治家が、そんな政治団体が、いまの世の中にひとつでもあるか——?

 個人としてはいるのかもしれない。が、そういう人は早晩消される。残るのは、悪貨ばかりなのだ。

 泡沫政党の一つ、いやなんなら最右翼とでもいうべきチョコミン党は、なぜか各地で勝利を勝ち取り、ついには与党へとのしあがった。なぜか?

 なぜなのだろう。

 きっと、あまりに暑い日が続き過ぎたせいかもしれない。

 そしていまでは私もおじいさん。

 孫にあげるのは、ハーゲンダッツショコラミントクランチかアンデスのクリームミント シン。

 なぜなら彼もまた特別な存在だからです。


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