祖の祖(お題:錬金術)
全てのものは毒であり、それが有用となるか単なる毒となるかは、その用量によるのだ。と、様々な祖の祖となるパラケルススは言った。
日本語でいえば、毒にも薬にもなる、が該当するか。何にもならないものは大根ぐらいのもので、強いていえば美味しい。が、毒にも薬にもならない。
国産の新型コロナウイルス用経口薬など、美味しくもないだけ大根以下だろう。いや、無駄に高価な分、大根に失礼かもしれない。
話が逸れたが、過去の呪物めいた医術を否定し、医療に近代科学的方法論を取り入れたパラケルススの功績は大きい。
錬金術といえば、卑金属を錬成して金を作るということから来ている。実際にパラケルススは、貧しい農夫に錬金してみせた、などという逸話もあるが、大切な点はそこではない。
既存の価値を転換するような、普通ではあり得ない何事かを成すこと。それが物質界において行われることはほとんどないが(ありえるとすれば粒子加速器による新たな発見とか、核融合がもっと手軽になってから、だろう)、それに比す精神世界の転換をもたらしたこと、それこそがパラケルススの一番の功績だろう。
いまとなっては単なる古い概念にすぎないフロギストンや「ガス」という単語、これは目に見えない気体(エーテルなど)を、あるものとして取り扱うパラケルスス的思想の影響が大きい。悪魔の証明ではないが、ないものを証明するのは難しく、だからこそ「ない」状態を定義することは、とてもとても大切なことなのだ。「0」の発明のように。
それを単なる知的な遊びや、概念を弄ぶような地点からではなく、地に足の着いた実学的なところから生み出していったパラケルススとは、なんと偉大にして摩訶不思議な存在なのか。
美の巨人ならぬ知の巨人の最期は、おそらく他殺だっただろうといわれている。
異端なるもの、異質なものは、時に盛大に持ち上げられながらも、基本、排除されるものなのだ。
いま在る世界の欺瞞を暴き、新しい世界を現出せしめることは、つまり世界の終わりを創出するということだからである。
祖の祖にして世界の終わりをもたらすもの、パラケルスス。
錬金術とは、つまりそのパラケルススの意志を継ぎ、いまある世界へ抗おうとすることなのである。
世界は終わりを待っている。
追記、というか蛇足。
よくよく考えたら大根は消化を助ける、という効能がありましたね……。漱石先生ご愛用のジアスターゼ。
ついつい「当たらない」というイメージで大根にしてしまいましたが、よりふさわしいのはきゅうりだなあ、とあとで気付きました。
もぅマヂ無理。。。
浅漬けにしょ。。。。
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